自殺対策基本法というものがあります。
それによって毎年9月10日~16日を「自殺予防週間」、毎年3月を「自殺対策強化月間」と定めています。
各機関が「いのち支える自殺対策」に取り組んでいます。
かに先生、このサイトご存知ですか?文科省から通知が来てますよ。
ええ、見ました。教員として、子ども達の自殺はなんとか食い止めたいですね。
難しい取り組みかもしれませんが、しかし決して手を緩めることはできない課題です。
私たち学校の先生は、子ども達にとって一番身近な大人の一人です。
子ども達の命は、なんとしても守りたいと思うものです。
そこで、今回は「ゲートキーパー」について調べたことをまとめます。
ゲートキーパー「命の門番」とは何か?
ゲートキーパーとは何か?
ゲートキーパーは「命の門番」とも言われます。心の不調や生き辛さを抱えた人が自らの命を断つ道へ向かわないために、生きていくための支援をする人たちのことです。
厚生労働省のサイトでは次のように定義れています。
「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のことです。
厚生労働省
この「気づき、声をかけ、話を聞いて、つなぎ、見守る」ことがゲートキーパーの役割ということになります。
ゲートキーパーになるのに、特別な資格はありません。誰にでもできるようになるということです。
教師がゲートキーパーになるときがあるということですね。
うーん、自殺を考えているかもしれない子供に、なんて声をかけたらいいのでしょう?
厚生労働省のサイトにもこの役割が紹介されていますが、実は「声をかけ」ることが一番むずかしいのではないかと思います。
いじめ・体罰(言葉の暴力)・虐待・ネグレクト・ヤングケアラー…、子どもを取り巻くリスクの行き着く先は、命に関わってきます。
教師は子どもの命に関わっている職業であり、子どもに声を掛けることがきでる職業です。
命の重さについて考え続け、いざというとき、臆することなく声をかけられる人間でありたいと思います。
みなさんは、あれ?おかしいなと気づいたときに声をかけることができますか?
ゲートキーパーの4つの役割とは?
では、このゲートキーパーの4つの役割、つまり「気づく、傾聴する、つなぐ、見守る」についてまとめてみます。
「声をかける」むずかしさについて述べましたので、それぞれの段階でなんと声をかけるかもメモしておきます。
気づく
家族や仲間の異変に気づいて声をかける最初の段階です。
表情が暗くなった、口数が少なくなった、お酒の量が増えた、人との関わりを避けるようになった、自殺をほのめかすことを言う。
こういった変化にはふだんから関わっている人間が気がつけるはずです。しかし、家族のように近すぎると気が付かないこともあります。
そのため、やはり教員の役割は大きいのです。週7日のうち5日、朝から夕方まで関わることができます。しかも一人の子供に対して、複数の教師が多面的に見ることができます。
学級担任、教科担任、学年主任、養護教諭、管理職、部活動顧問、それぞれの見方というものがあるはずです。学校がもつそういう機能をぜひ活かしたいものです。
どうしたの?何かあった?
元気ないなー、朝ごはん食べてきたかい?
何かしんどそうだけど、話し聞かせて?
傾聴する
本人の気持ちを尊重し、耳を傾けて聞くことを「傾聴する」といいます。
カウンセリングの研修でも最も基本的で、最も大切な技法として最初に学ぶはずです。
私たち教師は、子どもの話を聞いているとつい批判や反論をしたり、安易に励ましたりしてしまいます。
自分の価値観や、一般的な助言を押し付けることなく、相手に共感を示しながらじっくりと話を聴きましょう。
傾聴には5つのポイントがあります。
- 話しやすい雰囲気をつくる
- 先入観を持たずに聴く
- 質問をできるだけ控える
- 相手の発言をじっくりと待つ
- 勝手な解釈や評価、批評はやめる
うんうん、○○○だったんだね。(相槌、繰り返し)
あぁ、そうだったんだね。(共感、受容)
それは、○○○という意味でいいかな。それから?(確認、促進)
つなぐ
本人の気持ちを受け止め、考えを押し付けることなく、本人の意志を尊重した対応を取ります。
学校も組織ですので、管理職への報告・相談はもちろん必要です。それに続いて、自分の立場から生徒指導主事やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターなどに連絡・相談していきます。
問題に応じて適切な支援を受けられるように、保護者や関係する教師と連携したり、専門家や相談機関を連絡したりします。
一人で抱え込まないこと。チームで対応すること。チーム学校を狭い意味に捉えず、関係機関にまで拡大して捉えていくこと。これらは教師の責任回避のためではなく、すべて子どものためであると考えましょう。
先生が誰かに相談することができるからこそ、子どもも「相談する」という行為を学べるのです。
教員は子どもとの距離が近いわりに、利害関係が薄いという特徴があります。
これが親(保護者)であれば、子どもは「親に心配をかけられない」と考えたり、実は「親が原因になっているから言えない」こともあります。
食事を与えられない、スマホを取り上げられる、進路実現への金銭を頼めない、などの不利益を心配することがないからこそ、子どもは教師に話をしてくれるのです。
こういうところがあるから、ちょっと話に行ってみる?
先生といっしょに○○へ行ってみようか?
見守る
相談先へつなげた後も、相手のペースに合わせて声をかけたり、話を聞いたりしていきます。
温かく様子を見守り、寄り添い、心の回復を待つようにします。
何をもってして終わりというのかは難しいところです。
しかし、卒業してしまったら直接関与するようなことは何もできなくなります。つぎの関係機関(進学先、就職先)に情報提供するくらいしかできません。もしかしたら、自分は異動してしまうかもしれません。
だからこそ、「味方になってくれる大人は何人もいるのだ。」「自分はだいじょうぶだ、また何かあれば頼るところはある。」と本人が思えるようになるところまで、付き合うつもりでいましょう。
私たち教師の最終目標を一言で言えば、子供の自立です。自立とは孤立でも依存でもありません。その子が自分の足で立って歩けるように、少しずつ手を放していくのです。
そのためには、先生自身も自分のコントロールする方法を知っていなければいけません。相手を孤立も依存もさせないためには、自分自身で自立とはなにかを考えていないといけません。
最近はどうですか?
ほかに先生が力になれることはあるかな?
ゲートキーパーとしての心掛け
代表的なゲートキーパーとしては民生委員がいますが、ゲートキーパーになるために特別な資格は必要ありません。
日頃から関わりを持ち、手を差し伸べられる身近な人がゲートキーパーになることができます。
では、日頃からどんなことに気をつけていればいいのでしょうか。
ゲートキーパーとしての心掛けについて、政府広報の記事から紹介しておきます。
- 自ら相手とかかわるための心の準備をしましょう
- 温かみのある対応をしましょう
- 真剣に聴いているという姿勢を相手に伝えましょう
- 相手の話を否定せず、しっかりと聴きましょう
- 相手のこれまでの苦労をねぎらいましょう
- 心配していることを伝えましょう
- 分かりやすく、かつゆっくりと
- 一緒に考えることが支援です
- 準備やスキルアップも大切です
悩む人の存在に気づき、寄り添い、耳を傾けることが、命を守ることにつながります。
「どうしたの?」とひと声かけることが、ゲートキーパーの第一歩です。
子どもの犠牲が一つでも減ってくれることを願ってやみません。