教育現場で「ウェルビーイング」を高めるためにできること

 教育用語

ウェルビーイングという言葉が学校でも出るようになりました。

えび先生
えび先生

ウェルビーイングってよく聞くようになりましたね。なんとなくは分かるんですけど?

かに先生
かに先生

これまで言っていた幸せとか成功とかとはまたちがう感じだね。

今回はウェルビーイング(well-being)についての紹介です。

  

Well-beingとは何か?

ウェルビーイングとは何か?と言われても、国際的に明確な定義はないようです。それでも、有力なものはあります。いくつか紹介します。

英和辞典のwell-being

英和辞典では次のようになっています。

well-being  健康・幸せ・福祉。幸福で健康で順調な満足した状態

  

WHOのwell-being

well-being1946年にWHOの健康の定義として使われた言葉です。

「健康」とは身体的、精神的、社会的に良好な状態であって、単に疾病、病弱でないということではない。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

この良好な状態と訳されている部分に使われているのが、「well-being」です。

  

マーティン・セリグマンのポジティブ心理学

マーティン・セリグマン(ポジティブ心理学)は、ウェルビーイングを高める5つの要素を挙げています。

マーティン・セリグマンはポジティブ心理学の分野で知られており、彼の提唱したウェルビーイングを高める要素は「PERMA」として知られています。以下に、その要素を説明します。

  1. ポジティブ・エモーション(Positive Emotion):前向きな感情
    • ポジティブな感情や喜び、幸福感などが含まれます。これは生活に喜びや楽しみを見出すこと、ポジティブな出来事を大切にすることなどを指します。
  2. エンゲージメント(Engagement):没入感
    • エンゲージメントは、自分がやりたいと思うことに没頭し、没頭することで時間を忘れ、充実感や満足感を感じることを指します。仕事や趣味などがこれに当たります。
  3. リレーションシップ(Relationships):関係性
    • 人間関係が良好であることがウェルビーイングにとって重要です。家族、友人、同僚との良好な関係が含まれます。人とのつながりが喜びやサポートをもたらすとされています。
  4. ミーニング(Meaning):やりがい
    • ミーニングは、人生において意味や目的を見出すことを指します。自分の行動や努力が価値あるものであると感じ、大局的な視点で物事を捉えることが含まれます。
  5. アチーブメント(Achievement):達成感
    • 達成感は、目標を設定し、それを達成することで生じる満足感や自尊心の向上を指します。自分の目標に向かって進むことで、達成感を感じることがウェルビーイングに寄与します。
         

これらの要素が組み合わさり、個々の人が豊かな人生を築くのに役立つとされています。ポジティブ心理学は従来の問題志向の心理学に対して、人間の強みや幸福感を追求するアプローチを提供しています。

ウェルビーイング・バランスのとれた生活

私たちの生活はますます忙しく複雑になり、仕事や学業、家庭の責任が重なり合っています。

こうした状況の中で、私たちの心身の健康を守り、向上させるために、Well-being(ウェルビーイング)の考えを価値観・指針として考えてみます。

7つに分けて挙げてみました。こういった指針を月曜日から日曜日までに割り振ったり、1週間で1つにスポットを当てて取り組んでもいいと思います。

Well-beingの7つの指針

1. 身体的な健康の重要性

  • 良質な食事と適切な運動を組み合わせ、身体的な健康を促進する。
  • 充実した睡眠の確保がWell-beingの基盤となる。

2. 心理的な健康の育成

  • ストレス管理や感情の認識を通じて心理的な健康を維持する。
  • ポジティブな思考や自己肯定感の向上を目指す。

3. 社会的なつながりの大切さ

  • 良好な人間関係やコミュニケーションにより社会的な満足度を高める。
  • 共感力と協力関係の構築に注力する。

4. 仕事や学業の満足度の向上

  • 意義ある仕事や学びを通じて達成感と充実感を得る。
  • 職場や学習環境でのサポートと調和を図る。

5. 精神的な面の育成

  • 目標の設定と自己成長を通じて精神的な充実を追求する。
  • ポジティブな精神状態を維持するための手段を見つける。

6. 環境の健全性への配慮

  • 清潔で安全な生活環境の維持がWell-beingに寄与する。
  • 持続可能な生活態度と環境への意識を高める。

7. 感謝と意識の向上

  • 小さな幸せに感謝し、日常の中でポジティブな要素を見つける。
  • マインドフルネスを通じて現在に集中することで意識を高める。

  

Well-beingを学校で実践する

さらに、教員としてWell-beingを向上させるためにできることを考えてみます。

1. バランスのとれたスケジュールの構築

事務仕事や授業準備の合間にリラックスする時間を確保する。

リラックスの仕方は人それぞれだと思いますが、コーヒーをいれる。書類を片付ける。背伸びやストレッチをする。10秒で気分を変えられること、1分でできること、3分でできること、5分でできることを持っておくとよいと思います。

一週間のなかで、さらに長期休業中の、娯楽や余暇の時間を計画的に組み込む。

スケジュールに書き込んでしまえば自分との約束ができます。家族や友人を巻き込めば、より強固なものになりますね。やりたいことや行きたいところのウィッシュリストを作っておくと、その時々に柔軟性をもって楽しみを持てます。

2. チームビルディングと共感力の向上

生徒とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築く。

教員の仕事として、生徒とのコミュニケーションは欠かせないものです。朝から下校まで、信頼関係を築き、保ち、育んでいきましょう。朝会ったら声を掛ける。昼休みに外で一緒に遊ぶ。ベンチで見守ったり、図書室をのぞいたりしましょう。

教員チームとしての協力関係を強化できるようにする。

教員として職員室の人間関係は重要です。気が合う、話が合う人ばかりではありませんが、大人としてどんな人とでもコミュニケーションを取れるようになりましょう。いわゆる「風通しの良い職場」を作ることです。

3. 学びの体験の工夫と意義づけ

生徒が楽しみながら学べるような教材・教具、活動、発問を準備する。

先生にとっても生徒にとっても、学校で一番時間を費やすのは授業です。授業が楽しければ先生も生徒もともにウェルビーイングを高められます。そのために、教材研究、教材準備は欠かせません。いつでも発問を考え、活動を試します。

授業の意義と目的を生徒と共有し、学びの深化を図る。

授業は先生が一人でプレゼンテーションを披露する場ではありません。それでいいなら、動画配信で済みます。生徒たちが主体的、共同的に学ぶために教室に来ています。課題とまとめの対応をしっかりともって、どんな授業をするのか見通しを伝えます。そういったことを共有すると、教師と生徒の力で深い学びを作っていくことができます。

  

まとめ: Well-beingの実現への一歩

Well-beingは個人と社会全体の健康に寄与し、持続可能な幸福感を築くための鍵と言えます。

教員として、私たちは自分のWell-beingを大切にし、また生徒たちにもその重要性を伝える役割があります。

日常生活と教材研究はどちらも大切です。だからこそ、バランスのとれた生活とポジティブな教育環境を作っていくことは、より良い未来への道を切り拓くことになるでしょう。

Well-beingに焦点を当て、その視点を育てることで、教育の質と生活の豊かさを同時に追求できるようになります。