「SOSの出し方に関する教育」をすすめるために。

 カウンセリング

文部科学省では「SOSの出し方に関する教育」を教育課程に位置づけ、少なくとも年1回の実施をするように通知しています。

背景には、自殺対策基本法が定められて10年以上経つのに、自殺者の数が減らないという現実があります。

自殺対策基本法には、次のように書かれています。

自殺対策基本法(平成18年)
(心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等)
第17条
3 学校は、当該学校に在籍する児童、生徒等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、当該学校に在籍する児童、生徒等に対し、各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵養等に資する教育又は啓発、困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育又は啓発その他当該学校に在籍する児童、生徒等の心の健康の保持に係る教育又は啓発を行うよう努めるものとする。

ここに示されるように、つぎの3つの教育又は啓発を行うことになります。

  • 各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵養等に資する
  • 困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける
  • 心の健康の保持

「等」が入るとどこまで守備範囲を広げたらいいのか、迷うところではあります。

では、教育課程に位置づけるためには、どうしたらいいのでしょうか。

  

「SOSの出し方に関する教育」を教育課程に位置づける

教育課程に位置づけるところはどこか、例を挙げてみます。

小学校
  中学年
学級活動
 2(2)イ よりよい人間関係の形成
国語
(教材選定の観点)生命を尊重し、他人を思いやる心を育てるのに役立つこと。
小学校
  高学年
道徳
 3(1)生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する。
学級活動
 2(2)ウ 心身ともに健康で安全な生活態度の形成
保健体育
 G 保健(1)ア(ウ)不安や悩みへの対処
中学校道徳
 3(1) 生命の尊さを理解し、かけがえのない自他の生命を尊重する。
理科
 生命とそれを取り巻く自然の事物・現象を調べる活動を通して、自然環境を保全し、生命を尊重する態度を育てる。
中学校
  1年
学級活動
 2(2)エ 心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の形成
中学校
  2年
学級活動
 2(2)ウ 思春期の不安や悩みの解決、性的な発達への対応
中学校
  3年
学級活動
 2(2)ア 自他の個性の理解と尊重、よりよい人間関係の形成
保健体育
 保健分野 2(2)ア 心身の機能の発達と心の健康、ストレスへの対処

守備範囲が広いので、他にもあると思います。道徳の内容に「かけがえのない自他の生命を尊重する態度」があるので、教育活動全体を通して「SOSの出し方に関する教育」を進めていくことができると言えます。

  

「SOSの出し方に関する教育」に係る授業における留意点

授業をする上での留意点を挙げてみます。

SOSを出す・受け取ることを伝える

「困ったら相談していいんだよ」ということと、「相談されたら聞いてあげてね」ということを伝えます。

自殺の心理には、①ひどい孤立感、②強い怒り、③無価値感、④心理的視野狭窄、⑤苦しみが永遠に続くという思い込み、があります。

「これらが自分の中に現れてきたときに、それを周りに知らせていいんだ。」

「周りの友達がそれを知らせてきたら、まずは聞いてあげるといいんだ。」

このことを頭で知っていることがまずは大切です。そして、それを教師や親、大人に知らせることも必要であると伝えましょう。

このことを踏まえて、意見交換やロールプレイなどの体験をどのように取り入れるか、授業設計を検討していきましょう。

ハイリスクの子供たちへフォローアップをする

自殺を考えたことがある、自殺を図ろうとしたことがある、リストカットをしたことがある、身近に自殺した人がいるなど、自殺に対してリスクの高い子供がいる場合には、授業も慎重に行う必要があります。

  • 事前に管理職に伝えておくことで、組織的なケアを取れるようにする
  • スクールカウンセラーや養護教諭と一緒に行い、個別のケアを行う
  • 授業後の感想等に目を通してサインを読み取り、必要と思われれば外部機関へつなぐ

「SOSの出し方に関する教育」を授業で進めた結果、ハイリスクの子供たちが追い込まれてしまう可能性もあります。

先生自身も、一人で頑張ろうとしなくていいのです。みんなで取り組んでいきましょう。

外部講師、保護者を活用する

国や自治体、NPOなど、多くの関係機関が相談窓口を設けています。それらを紹介することで、どれだけの人が子供たちのことを気にかけているか伝えることができます。

実際に外部講師として来てもらうことも有効です。一度でも会ったことのある人なら、子供たちも話をしやすいはずです。

スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)には協力を求めやすいでしょう。ほかには学校医、保健師、社会福祉士などが考えられます。

  • 専門職の参画により、外部講師が必要に応じて相談相手になれることを児童生徒に周知することができる
  • 専門職は児童生徒の保護者も含めた世帯単位での支援ができる
  • 学校と地域の専門職とのあいだで協力・連携が生まれ、組織的対応が拡大・強化される

専門職を呼ぶことが難しい場合には、保護者に参観もしくは参加してもらうことも有効です。

保護者にも「SOSの出し方に関する教育」の大切さについて伝えることができます。保護者も相談機関があることを知ることができます。

親が授業のことを知っていると分かっていることは、子供にとっても安心感につながります。

  

生徒への教育が自殺予防に最も効果があるとも言われています。わたしたちは教師です。授業を通して、子供の命を守っていきましょう。