足を合わせて声を出して走るだけで、チーム力が個人の力も伸ばす。

 部活動顧問として

「イッチ、ニー!イッチ、ニー!」と声を合わせて走るのは、野球部の風物詩のように思います。

となりのサッカー部はバラバラに走っていることが多いですが、顧問の先生が変わると一緒に声を出して走るようになったりもします。

体育館の部活はどうなのでしょう?体育館の部活の経験が少ないのでよく分かりません。

  

足を合わせて声を出して走ると、どうなるか?

ジョギングやランニングをチーム全員で行うと、個人の限界を伸ばせるようになります。

こう言っても「またまたー」とか「そんなはずない」という声が聞こえます。

わたしの体験をお話します。

  

その年の野球部は、経験者も含めて力のある選手と、中学校から始めた初心者が半々のチームでした。

体力だけでなく意識も気持ちもバラバラです。

まずは体力つくりにジョギングを行うことにしますが、当然のようにみんなバラバラに走っています。走るのが好きでトップ争いをする生徒たちもいれば、ノルマをこなせばいいと言わんばかりに後ろをのんびり走る生徒もいます。

チームスポーツの意味が分かっていない集団の典型です。

  

そこで、次のようなことを行います。

「校庭10周のタイムを取ります」と言って、ストップウォッチ片手に記録を取ります。

こうすれば、のんびり走る生徒はいないはずです。

走り終わったらその平均タイムを計算します。

  

次に、野球部らしく全員で声を出して足を合わせて走らせて、タイムを取ります。

「声を出して、足を合わせる。わかりましたね! 校庭10周、よーい、はじめ!」

するとどうなるでしょうか?

  

  

不思議なことに、全員で足を合わせて走ったタイムのほうが個人の平均タイムよりも良くなっているのです。

もちろん、足の速い生徒、体力のある生徒にとってはタイムが落ちているでしょう。しかし、遅い生徒にとっては、平均以上の力が出せていることになります。

これがチームスポーツの面白いところです。

足を合わせて走ると何が起こるか?

さて、足を合わせて走ったとき、何が起こっているのでしょうか?

速い生徒は遅い生徒のことを考えて自分を抑えます。勝手なわがままを言わない、後ろを振り向くことを覚えます。自分一人ではできないことに気が付きます。

遅い生徒は速い生徒に追いつこうと必死になります。自分に妥協したり、諦めたりしなくなります。自分がチームのためにできることをやるようになります。

  

私も毎年やっている訳では無いので、毎回そううまくいくかは分かりません。

それでも、自分さえ良ければいい、自分さえ強くなればいい、自分なんかどうせなどと考えがちな選手がいるチームでは、試してみてはいかがでしょうか。

うまくいくことを願います。

  

そして、これは部活動全般に言えることかもしれませんが、個々の違いや強みを尊重し、協力することで、チーム全体がより強力になります。

スポーツは単なる勝敗だけでなく、仲間との連携やお互いの成長を通して、人間性やコミュニケーション能力も向上させる重要な経験となります。

生徒たちがお互いに助け合い、成長の喜びを分かち合うことで、チーム全体が一つに結びつくことができます。