今年度は理科の教科主任を務めるにあたって、 理科主任として5つの仕事を考えました。
小規模校だと一人で全ての仕事を行うことになるので、 何をするにしても理科主任としての仕事なのか教科担任としての仕事なのか考えていませんでした。
しかし、現在は大規模校で理科教員が自分を含めて5人います。複数の理科の先生方と一緒に仕事をするために仕事を整理する必要があります。学校の実態によって必要となる仕事は異なると思いますが、大規模校で教科主任として務める仕事を5つにまとめました。
理科主任の務める5つの仕事
理科主任としての仕事は次の5つです。
1.理科室、理科準備室をきれいにする。
2.理科部会の回覧板をつくる。
3.全学年共通の理科通信を発行する。
4.現職教育の指導案づくりを支援する。
5.予算交渉や外部団体などの渉外をする。
一つ一つ、解説してみます。
1.理科室、理科準備室をきれいにする。
みなさんの学校の理科室はきれいですか?隣の理科準備室はいかがですか?
理科の先生が多いと理科室や教材・教具の使い方についても共通理解するのが難しいので、きれいな状態を保つのは大変なことです。しかし、生徒の安全性を守り、学習意欲を高め、教員の授業準備、教材研究を効率化するためには、一番最初に必要な仕事になります。
散らかりの程度を見極めて、1年がかりでやるのか、夏休みにも取り組むのか、 1学期中に終わらせるのか、 主任として見通しを持ちましょう。私は経験上「1年がかりでやりましょう。」と宣言して、冬休み前に終わらせるのが目標になっています。
そこで最初の教科部会で「理科準備室をきれいにして、コーヒーを飲めるようにしましょう。」と先生方に提案しました。これがウケたようで、先生方が少しずつ動き出しました。
大事なことは、この理科室の片付けを主任が一人で行うのではなく、チームとしてみんなで行うということです。何がどこにあるのか、何をどう並べれば使いやすいのかは、先生方一人ひとりの考えがあります。
学年ごとにまとめるのか、物理・化学・生物・地学と分野ごとに分けるのか。
気体導入管などは部品ごとに分けるのか、三角フラスコなどと実験セットとしてまとめるのか。
電源装置や電流計などは理科準備室に置くのか、理科室に置くのか。
顕微鏡は箱にしまうのか、棚にしまうのか。
理科室が複数ある場合には、どこにどれを置くのか。などなど・・・。
理科室の環境や教材の数などを見極めながら、主任として最初の方針を示す必要があります。
しかし、その後は一緒に作業をしながら先生方の考え方ややり方を取り入れていきます。
先生方も自分の考えがみんなに分かってもらえれば満足するし、自分のやり方が反映された理科室ならば、自分でもきれいにしようという意識が芽生えます。
これまで何回かおこなわれた教科部会のときに、みんなで1時間くらいおしゃべりしながら片付けをやりました。おしゃべりの中で、先生方の考えを聞いて進めていきました。
おかげで今では、空き時間に片付けや廃棄を進めてくださる先生がいます。たくさんあるトレイを種類ごとに分けて重ねてくださる先生がいます。足りないものがあるとパッと買ってきてくれる先生がいます。先生方の意識が変わってきました。
ある程度軌道に乗れば、あとは主任としてはその変化に気がついて、先生方にお礼を言って回ればいいのです。割れ窓理論と同じで、汚い理科室は汚くなる一方ですが、一度きれいになった理科室はそうそうは散らかりません。(先生方の異動で変わってしまいますが)
主任としては、そろそろ美味しいコーヒーを準備してもいいかもしれません。
2.理科部会の回覧板をつくる
みなさんの学校では教科部会が定期的に設定されていますか?それは年何回ですか?
時間割の中に設定されていたらありがたいところです。年間計画に入っていれば期待したいところです。現場は忙しいです。現職主任が「教科部会を開いてください。」と言っても、なかなか集まれないことがあります。
管理職や事務室から、薬品の管理や廃棄についてなどの通知、各種研修会の案内などの文書が主任のもとに届けられます。これを主任止まりしないようにします。先生方にも課題意識としてもってもらうためです。
この教科部会の開催の難しさと、理科に関する文書の共有のために、「理科部会回覧板」というのを作っています。
単純にバインダーにA4の紙で連絡事項を書いて、回覧してもらうだけです。
- 予算、薬品、備品、消耗品についての相談
- 授業や教材についての質問・相談。知っている人はそれへの回答
- 校内研修(現職教育)についての連絡
- 研修のアイデア出しなどについて、
このときに、通知文書や校外研修のお知らせをバインダーに挟んで回覧してもらいます。
特に書くことがなければ、先生方に質問をして、先生方がご自分の書き込めるようにしたりするスペースを作ることもあります。例えば「評価のしかたについて先生方のやり方を教えて下さい。」などです。
あるいは、自分が知っていることで先生方の役に立てそうな情報を載せます。例えば「天体シミュレーションのフリーソフトのオススメとして『Mitaka』というのがあります。」などです。
大規模校で複数教員がいると、なかなかコミュニケーションが取れません。取っている余裕がない、下手すると数日会わないということもあります。それを解消するために考えたのが教科部会回覧板です。
3.全学年共通の理科通信を作る
みなさんは理科通信を発行していますか?
理科通信については、生徒の学力向上の基礎の基礎として、生徒の興味、関心を高めるために始めました。本当は各先生が作って、全校生に配付するのが理想かもしれません。
しかしスタートの時点では、
どうしても先生方の負担感が大きいこと
生徒の大半は読まずにゴミにすること
が多いので、主任としてまず小さく始めることにしました。
私一人で作って、 A3サイズでプリントアウトして、理科室前の壁に貼っていきます。
大規模校なので、全校生に一枚ずつ配るのは厳しいと判断しました。これをするなら、事務長に相談しなければいけないでしょう。
10枚くらい貼ったら、次からはバックナンバーとしてファイルに重ねて綴じていきます。このファイルも壁に貼っておいて、後からでも読めるようにしています。
さっそく理科室を利用するクラスの生徒が鍵が開くまでのあいだに見ていました。休み時間や掃除の後に読んでいる生徒を見かけることもできました。
内容は、子供たちの素朴な疑問だったり、教科書の発展内容を解説したり、新聞や科学雑誌に載っていた新しい研究成果などです。写真や図を入れたり、難しい言葉をなるべく使わないようにしたり、中学理科の知識でも理解できるように配慮しています。
4.現職教育の指導案づくりを支援する。
現職教育の進め方は各学校によって違うと思いますが、多くの学校で授業研究を中心に行っていると思います。そして、研究授業を行うためには指導案が必要になります。その指導案づくりについて、理科主任として先生方のサポートをしていきます。
例えば、年度当初(昨年度末)の学力調査の結果をお知らせしたり、理科への関心を測るためのアンケートを作成したりします。
また、現職主任が示した指導案の形式をきちんと伝えて、モレ・ヌケのないように点検します。指導案が書き進められているか、ときには声を掛ける必要もあると思います。
できあがった指導案を見るポイントもあります。指導案の形式が求められているものに合っているかどうかはもちろんです。他にもあります。
留意点の書き方が、「~することによって、~する。」「~するために、~する。」などと教師の動きとその意図が読み取れるようになっていること。
学習内容と時間配分を見たときに、時間配分が均等だと山場がはっきりしない授業になります。
時間配分が2極化していると学習活動を盛り込み過ぎの可能性があります。
課題とまとめに整合性があるか、評価の観点と方法は適切か、板書の内容に不備はないか、生徒の活動がイメージできるように書いてあるか、予想される反応とその対応が考えられているか、細かいことを挙げるとキリがないかもしれません。
教科主任として、年齢や経験年数に臆することなく、自分の考えを伝えることは必要です。先輩の先生に物申すのは難しいかもしれませんが、そこは「ここってどういうことですか?」など質問するような形で伝えていくことはできると思います。もちろん、若い先生にはどんどん育ってほしいので、「ここはこういうのはどうですか?」と提案していきましょう。
研究授業を通して先生方の授業力を向上することが、生徒の幸せにつながります。
研究授業のとき、多くの先生方に見られる緊張に耐え、自信をもって生徒の前に立てるようにする。それをバックアップするのが主任の仕事だと思います。
5.予算交渉や外部団体などの渉外をする。
理科主任として、理科室・職員室の外での仕事というのもあります。
理科室の備品を処分することで、理振台帳の充足率を下げることができます。そうすれば、予算が割り振られる可能性が高まります。問題は、備品の処分を面倒がる事務さんがいるときです。よく説明して、どうして処分する必要があるのか、分かってもらうようにしましょう。カビの生えた標本を見せたり、ただの木箱の冷温器とか、レンズの入っていない天体望遠鏡とか、理科準備室には
年度の終わりに申込をしておく必要がりますが、 うちの学校では地域の科学館から展示パネルを借りることができます。申し込んで抽選に当たれば、一年間理科室の掲示物に悩む回数が減ります。中学生は忙しくて科学館に遊びに行くことは稀です。そこで、科学館から借りて見せられるものは見せてあげたいなと思っています。
うちの学校では放射線教育を進めていますが、専門的な講話や機材は専門機関にお願いするしかありません。日本放射線影響学会などが行っている出前講座を利用しています。そういった外部団体、専門機関との連絡・調整は主任の仕事になると思います。相手が学会の先生でも大学の先生でも、面倒がらずに、怖がらずに、どんどん連絡をしていきます。予算も含めて、力になってくださる方は必ずいます。
自分が主任としてがんばることで先生や生徒を一歩前へ
今、自分が理科主任としてやっている仕事内容でした。それぞれについて、もう少し詳しく解説するかもしれません。
自分ががんばることが、他の先生方への刺激になったり、生徒の学習や成長の役に立てれば幸いです。