
昭和の顕微鏡、はじめて見ました。できれば最新のがいいなぁ。

うーん、新しいのもいいんだけどね・・・。数が・・・。
理科室の備品や消耗品を購入するときのお金の話、とくに理科振興法(理振)を当てる話を書きました。
今回は、配分された予算で新しく備品を購入するとき、どのように考えて備品を揃えていくかという話をしていきます。
理科室に何があって何がないのかを確かめる
理科室の片付けを行いながら、理科室にあるもの、ないものを把握したことと思います。
リストをつくって、カタログで値段を調べてみましょう。同じようなものでも、メーカーによってびみょうに価格が異なるので、手間はかかりますが比較する価値はあると思います。
その中から優先順位を決めて買っていくようになります。
定番とも言える、ナリカ(中村理科工業)、ケニス、島津理化のリンクを貼っておきます。
わたしはカタログを見ながら欲しいものに付箋をどんどん貼っていって、後から順位付けしていくようにしています。
他にも理科の先生がいれば、必ず意見を聞くようにしましょう。
.jpg)

備品を何個ずつ買っていくかは実験台の数で決まる
せっかく配分していただいた予算ですので、無駄なく大切に使っていきたいところです。
このとき基準となるのは、生徒用実験台の数です。理科室にある実験台の数はいくつでしょうか?
6台の学校もあれば、10台の学校もあると思います。第1理科室と第2理科室で数がちがうという場合もあると思います。
実験台の数が生徒の実験班の数になることが多いので、それに応じた数の備品が必要になります。
ここを学級の生徒数で考えてしまうと、年ごとに生徒数は変わりますので注意が必要です。
生徒の実験機会を増やすことを考えれば、準備は大変でも実験台の数だけ用意したほうがいいでしょう。
ちなみに、学級の生活班と、理科室での実験班は別の物として考えてもいいと思います。
理科室の備品は同じものを揃えていくのが大事
欲しいものも決まった。何個買うかも決まった。よし、あとは注文だ!
と行きたいところですが、ここで一つ考えていただきたいことがあります。
それは、その備品が今あるものと同じものかどうかです。
理科室の備品というのは、できるだけ同じものを揃えていくようにします。
生徒用顕微鏡がいろいろと混ざっている理由
例としては、各学校で一番分かりやすいと思うものは「生徒用顕微鏡」です。
わたしが今までに勤務した理科室での話ですが、昭和40年に購入したものから、平成20年代に購入したものまで、さまざまな顕微鏡がありました。
2つの中学校が合併してできた中学校なので、そのとき双方の理科室にあったものが一緒くたに混ぜられたのだと推測できました。
当然、昭和40年のものは古めかしく、レンズも汚れていて、レボルバーがカチッと止まらなかったりして、残念な感じです。
ただ、顕微鏡は生徒一人に一台を目指していたので、捨てずに使っていました。
今となっては逆に貴重な「鏡筒上下式顕微鏡」があったりもします。

これはこれで資料的に取っておきたいところですが。

そういうこと言うから理科室が片付かないんです!
予算がついて新しいものが買えそうなときに、入れ替えていくつもりでした。今までの先生も徐々に買い揃えようという気持ちだったのかもしれません。
しかし困ったことに、理科室に置いてある顕微鏡は、そのときの先生の好みやらで買ったらしく、さまざまな規格の物が混在してしまっています。
生徒にしてみれば、先生が説明しているものと違う、友達が使っているのとは違う、ということになりす。
もちろん、顕微鏡の使い方の基本は変わらないわけですから、どの顕微鏡でも使えるようにはなります。
しかし、同じものを揃えておくに越したことはないです。誰でも新しいものがいいですから、古い顕微鏡が割り当てられた生徒はそれだけでモチベーションが下がりかねません。
学校の統廃合の他にも、災害で破損してしまった、理科の先生が新しいもの好きだった、営業さんの押しに負けた、特に考えていない・・・いろいろあり得ます。
一度には無理でも段階的に揃えていく
前回の記事のようにして、理科室を片付けて理振が当たったさいに、追加で購入した顕微鏡は、今あるうちで一番数が多いものと同じものを注文しました。
メーカーさんや教材屋さんには最新式の顕微鏡を勧められるのですが、「教科書に載っているようなシンプルなものがいいです。」と言って断っています。
生徒用顕微鏡だけでなく、双眼実体顕微鏡、電源装置や電流計・電圧計・検流計、光学台、プーリー付き手回し発電機、数を揃えたいものはそれなりにありますね。
もちろん潤沢な予算がついて、ぜんぶ買い換えられるというのならいいですが、そうすると、今まであったものはすべて廃棄するということです。その理由を事務に説明できるのならばいいかとは思いますが、それは正直難しいところです。
それならば、第1理科室はこの型番の顕微鏡、第2理科室はこの型番で・・・というように、段階的にそろえていくほうが現実的だと思います。
理振ですべて買うことができないばあいは、ほかの予算も足し合わせていきましょう。予算の出どころはちがっても、型番が同じものは購入することができます。
消耗品を「揃える」のが意外と難しい
2万円を超えると「備品」になるのですが、それ以下だと「消耗品」扱いです。
消耗品は消耗品で予算があるので、その範囲で買ってもらうことになります。
しかし、その予算も限られているわけですから、買い揃えるのは難しいことが多いです。
例えば、上のような生徒実験用光学台です。
理科室には凸レンズの焦点距離が10cmの光学台セットが3つと、15cmのものが2つありました。
これでは実験結果を比較するときに、むだに複雑になってしまいます。
10cmのものをあと3台揃えれば、6班で同じ実験結果の比較ができます。
というわけで、備品で注文しようと思ったら問題がありました。
残念ながら2万円しないのです。
価格というのは需要と供給で決まるはずです。
光学台を欲しがるのなんて学校の先生しかいないのに、企業努力の賜物でしょうか、2万円を切る価格設定なのです。
光学台だけではありません。上で書いた電流計・電圧計なんかも意外と安くて、二万円もしません。生徒に使わせる実験器具は、実はお安くなってしまっているのです。
光学台も2万円しないので、買ってもらえません。カタログに2個セットというのがあって、これだと4万円近くになるからどうかと思って申請しました。
そしたらわざわざ役所から電話がかかってきて「1個当たりの値段だと○○円ですよね」と言われて却下されてしまいました。
むー、無駄なもの、無駄に高いものを買おうとしているわけではないのに…。
このときは仕方なく、事務長に相談することにしました。学校に割り当てられた教材費でなんとか買ってもらえるようにお願いしました。
先生、生徒のため持続可能な理科室をつくる
こういうめんどくさいルールに縛られながら、理科室の環境を整えていくことになります。
理科ばかりではないですが、学校のお金というのは保護者やPTAから集めたお金、自治体住民(国民)の税金です。
無駄なものを買ってホコリを被らせたり、壊れたまま放置したりしないことは当たり前です。そして、きちんとした購入計画のもとで、買い揃えていくようにしましょう。
たとえ自分が異動することになったとしても、つぎの先生にその意図が伝わるように引き継ぎをしたいものです。
いわば、「持続可能な理科室」ということです。
理科室の片付けは、日々の授業に追われているとなかなかできないものです。わたしも夏休みの午後など長期休業を利用して行うことが多かったです。
今はコロナウイルスのせいでほとんどの学校が休校措置を取っています。いずれ再開するときに、少しでもきれいな理科室で生徒を迎えられうように、片付けを進めていきましょう。

先生、理科室が汚くていやだー。ぜんぜん落ち着かなーい。
むかし、そんなふうに生徒に言われたことがあります。そのとき赴任したばかりの自分としては、正直つらい気持ちになりました。
理科教師にとって、理科室は生徒を迎えるテーマパークも同然です。
せっかく教室から来てくれたのだから、気持ちよく勉強できる・実験ができる理科室を作っていきたいものです。