理科準備室の薬品庫には、どれぐらいの種類の薬品がありますか。
本校の理科室は、今までの勤務校に比べると少ない方でホッとしました。
使いもしない、使いきれもしないほどの薬品がある学校があります。

新品の塩酸10本とか、何年がかりでつかう気だよ!
と思ったことがあります。
薬品はできるだけ少ない方がいいです。使わない薬品はもちろん要りません。
不必要な薬品は、薬品回収の際にお願いして、処分してもらうようにしましょう。
今回は理科室の薬品についての話です。
薬品は少ないほど負担が減るから、増やさない努力を。
負担を感じる一番は、薬品点検をするときです。
学校ごとにいつ行うかという決まりがあると思いますが、全量点検のときの苦労を思うと薬品ビンがたくさんあるとほんと嫌になりますね。
薬品がたくさんあるということは、それだけ管理のリスク(破損・変質・事故・盗難)が高まり、管理の手間(全量点検・一覧表作成・使用簿作成)がかかるということです。
薬品の管理は理科教員の仕事の一つです。ですから、薬品ビンが少なければ少ないほど、薬品管理の仕事が少しでも楽になると考えましょう。
ふだん薬品を使用したら、薬品使用簿に記録をすると思います。このときも、薬品ビンの数が少ないほうが記録も簡単になります。
学校によって、理科教員のメンバーによって、記録の仕方・やり方は違いますからそれに慣れるようにしましょう。薬品使用簿と薬品管理簿が同じになっている学校もあれば、別になっている学校もあります。(当然、一つになっている方が楽だと思いますが…人によるのかな)
理科教員が複数いると、薬品の注文が重複することがあります。理科の会計担当の先生に目を光らせてもらうようにしましょう。
また、第1、第2理科室で同時に薬品を使うことがあります。同じ薬品が2本ほしいところですが、これをやってしまうと中途半端な薬品ビンを2本つくることになります。
濃度調整して空き瓶に入れたり、その時間に使うぶんだけシャーレに入れて分けるなど、できるだけ面倒がらずに、先生方で話し合うようにしましょう。
実際には忙しくてその暇もないと思います。塩酸やエタノールなどは中途半端2本くらいは目を瞑ろうと思います。特に、他の先生が5%などに濃度調整した薬品というのは、どうにも信じられないときがあります。
選択理科、発展内容でつかう薬品は買い揃えない。
発展内容で使えるかもしれないという薬品も、ほどほどの種類と少ない量で構いません。むしろ無くても困りません。すでに薬品があるときに、発展内容にチャレンジしようかなというだけです。わざわざ薬品を買ってまで行う必要のある発展的実験というのは少ないはずです。
もちろん、研究授業などで発展的内容を扱ったり、教科書の別案の実験を行ったりするときには、特殊な薬品を買う必要はあるかもしれません。ただ、それでも(そんな薬品がないとできない実験じゃ参考にならない。)と思われかねませんが。
同様に、例えば炎色反応やスライム作りなど、かつての選択理科で扱いそうな題材の薬品はあってもいいかもしれませんが、たくさんは要りません。
やるとなれば、そのとき注文すればいいのです。買い揃えておく必要はありません。
多少割高に感じても、500gではなく25gとか少ない量のものを購入しましょう。余らせてしまうと、つぎに来た先生を困らせるだけです。
揮発したり、酸化したりする薬品は少量で注文する。
ふだんの授業で困るのは、単体の金属粉末や揮発性の高い薬品です。
たとえば、「銅を燃焼させて質量が何g増えるか。」という2年生の定比例の法則を導く実験があります。
はじめの銅の質量をはかり、加熱をした後の酸化銅の質量を測ります。そこから銅に結合した酸素の質量を求めて、4:1という定比例の法則にもっていきます。
そのとき、新品の銅であればちゃんと質量が増えて、何回目かの燃焼で、教科書通りに一定の質量増加で落ち着きます。
しかし数年前に買ったような銅だと、すでに空気中の酸素と化合してしまっていて、燃焼させてもなかなか質量が増えないということが起こってしまいます。
当然、生徒はそんな事情は知りませんから、「失敗した。」「うまくいかない。」となってしまいます。
この話をすると「それなら、あらかじめ炭素で還元すればいい。」とか「塩酸とか硝酸で洗うといいらしいよ。」なんていう答えを聞いたことがあります。
それは残念ながら、机上の空論です。現場にそんな余裕はありません。古くなった金属を戻すために酸洗処理をするなんて、時間の無駄としか思えません。
そもそも金属が酸化するほど放置しておくような、薬品の購入計画に問題があるのです。
1年で使い切れる、その単元で使い切れる、少量の金属粉末を購入しましょう。いまは25gから扱っている物が多いです。
過酸化水素水(オキシドール)のような揮発性が高い薬品も同様です。
二酸化マンガンと過酸化水素水で酸素を発生させる、メジャーな実験ですね。1年生が毎年行っていますが、いざ使おうとすると、ぜんぜん濃度が足りないということがあります。がっかりします。
アンモニア水は多少揮発しても、実験そのものではあまり問題はないように思いますが、濃度が正確ではなくなります。「アンモニアの噴水」など使い所は限られるのですが、定番だからこそ欠かせない薬品でもあります。
揮発性の高い薬品や、単体の金属粉末(銅,鉄,マグネシウム等)はできるだけ年度で使いきれる量だけ購入しましょう。
年度の初めに確認をして、単元に入る前に余裕をもって注文すればいいだけです。会計担当の先生、薬品管理担当の先生がいるのであれば、そういった話をして共通理解しておくとよいと思います。
「理科の薬品はどれぐらい買うか?」のまとめ
理科の薬品はどれぐらい買ったらいいのでしょうか、まとめてみます。
1 リスクと手間を考えて、薬品ビンは増やさない。
2 選択理科や発展内容で使用する薬品は、使うときに少量を購入する。
3 金属粉末や揮発性薬品は、使用する単元に入る直前に購入する。
4 理科教員どうしで薬品の購入計画、点検計画などを共通理解しておく。
マイクロスケールケミストリーも広まってきています。薬品の使用量はますます減っていきそうです。できるだけ理科室に使わない薬品は残っていかないように気をつけましょう。
どうしようもないときは、薬品の処分も検討しましょう。もったいないと思うかもしれませんが、リスクと手間をリセットすることはできます。本当に使う薬品であれば、購入もするでしょう。
以上、薬品庫の中で、何本も残っている銅粉末の薬品瓶を前に思ったことでした。