【中2】化学反応式をマグネットを使って指導するときのコツ

 理科の工夫・改善

中学2年生の理科での難関の一つは、化学反応式をマスターさせることだと思います。
化学反応式の指導では、マグネットを原子に見立ててホワイトボードに貼って動かしながら考えさせる実践が多いと思います。この授業実践のコツを紹介します。

ただ、コツと言うほどではないかもしれません。
単純に、マグネットに余計なことを書かずにそのまま利用するというだけなんです。
念のため、やり方を含めて記事にしておきます。

化学反応式をマグネットを使って指導するコツ

学習指導要領解説には、化学反応式について以下の記述があります。何か新しいことをしようとするときに、こういう基本に立ち返るのは大切です。

化学変化  2種類の物質を反応させる実験を行い,反応前とは異なる物質が生成 することを見いだして理解するとともに,化学変化は原子や分子のモデ ルで説明できること,化合物の組成は化学式で表されること及び化学変 化は化学反応式で表されることを理解すること。

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説p48

物質同士が結び付く反応と,「(ア)物質の成り立ち」で学習した分解における化学変化を,原子や分子のモデルを用いて考察させ,微視的に事物・現象 を捉えさせるようにする。その際,模型を用いるなどして目に見えない原子や分 子をイメージしやすいように工夫することが考えられる。

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説p49

化合物の組成は化学式で,化学変化は化学反応式で表されること,化学変化の前後では原子の組合せが変わることを理解させる。その際,化学式や化学反応式は世界共通であることや,化学変化を化学反応式で表すことは化学変化に関係する原子や分子の種類や数を捉える上で有効であることにも気付かせることが考えられる。なお,化学式や化学反応式については,簡単なものとして,観察,実験などで実際に扱う物質や化学変化で構成する原子の数が少ないものを取り扱 う。

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説p49

中学校の化学反応式の指導で大切な点は以下の3点です。

・原子の種類や数は、化学反応の前後で変わらない。
・ 化学反応は原子の組み合わせが変わることである。
・原子の種類や数を増やしたり、複雑な化学反応式を扱ったりしない。

マグネットをたくさん準備する

まず、マグネットはいろいろな色(4色以上)をたくさん用意します。中学校で習う化学反応式で一番やっかいなのは一番最初に出てくる「炭酸水素ナトリウムの分解」だと思います。それに必要となる原子(私のイメージする色)は、

  • 炭素(黒)
  • 酸素(白)
  • 水素(青)
  • ナトリウム(黄色)

というわけで、1班につき上記の数があれば何とかなるはずです。ピッタリだと悩む余地がないので、予備でいくつか多めに入れておくと難易度が上がると思います。

大きさもいろいろあって構いません。水素原子は小さいので小さいマグネット、金属原子は大きいので大きめのマグネット・・・ぐらいの気持ちでいいと思います。厳密な大きさ(比率)を再現できるわけではないです。大切なのは原子の組み合わせが変わることに気づくことであって、大きさは気にしなくていいです。

マグネットはダイソーなどの100均で揃います。ご自分の学校を思い出してください。学校にはマグネットが大量にあると思います。理科室や事務室でぜんぜん使っていないマグネットはありませんか。まずはそれを探してを数を数えてみましょう。

事務室には使われていないマグネットがたくさんあります。マグネットなんてそうそう無くなったり、壊れたりするものではないのでストックが大量になっていることがあります。買ってしまった手前、使ってほしいのが事務室の本音です(恐らく)。言えばきっといただけます。

ホワイトボードなどを準備する

ホワイトボードはA3サイズくらいのものを用意します。マグネットの大きさを考えるとA4は小さいです。大きすぎても意味はないのでA3がいいと思います。

ホワイトボードは横に使って、中心に「→」をホワイトボードマーカーで書きます。消えるのが嫌だというときには、マグネットシートを切り抜くなり、画用紙で作って裏にマグネットシールを貼るなりして作ってもいいと思います。このとき「+」は煩雑になるので要りません。

マグネットやホワイトボードマーカー、イレーサーをいれておくトレイやタッパを用意するのもいいと思います。

ホワイトボードなどもやはり100均で揃います。 消耗品費もしくは生徒実験費などで購入できると思います。無いときは買うしかないですが、無駄に買いすぎないようにしましょう。

どうして何も書かずにマグネットをそのまま使うのか

さて、上記のとおり準備は進められますが、やはり最大の悩みはマグネットの数だと思います。

理科室にも同じような授業をしようとしたマグネットがあると思います。しかし、私が出会った理科室のマグネットたちには、わざわざ白いマグネットに「H」とか、黄色いマグネットに「C」とか書いてあります。つまり、マグネット1つを1種類の原子に決めてしまっているのです。

マグネットには何も書かない理由

マグネットによって、白は「H」、緑は「Fe」と決めてしまうから数が足りないという面倒・手間・トラブルが起きるのです。

マグネットには「何も書かない」で使用するのが、この授業をするときのポイントです。でもマグネットが何を表すのか分からなければ話になりません。

私の提案は、適当な数のマグネットを配って、生徒たちに自分たちで決めさることです。

数学で「バナナの本数をxとする。」というように、生徒はモノを別のものに仮定することを学んでいます。そんなことを根拠に説明してあげると、生徒にはそれほど違和感なく受け入れられます。

またテストでも、「白丸を水素、黒丸を炭素、二重丸を酸素としてモデルを書きなさい。」なんていう問題が出ます。ただ、白丸が常に水素だなんてルールはありません。臨機応変に、問題に合わせて対応する力をつけさせなくてはけないのです。

生徒同士で説明させることで理解を確かめる

生徒同士で説明させることで、一人ひとりが説明する機会を増やします。人に教えるときが一番頭が働くからです。
また、マグネットを使うことで思考の見える化をしていますので、間違いが合った場合には生徒同士での教え合いもスムーズに行きます。
活動のはじめには次のように指示します。

「自分たちでどの色のマグネットを水素(H)にするか、決めてからスタートしましょう。」

「つぎの問題でも同じにしてもいいし、さっき水素だったマグネットを炭素にしてもいいよ。」

「説明する人が、どのマグネットが何を表すか宣言してから始めてくださいね。」

これでマグネットに書いたり貼ったりする手間も、マグネットの必要な数を揃える手間もなくなります。

生徒たちはワイワイと話し合いながら、お互いに学びあって理解を深めることができます。

先生は「このピンクのマグネットは何を表しているの?」などと質問していきます。先生も生徒の思考が見える化していますので、生徒の説明を聞きながらマグネットを動かしてもらうと、生徒たちが理解していることを確認しながら、評価しながら、机間巡視していくことができます。

マグネットを利用した化学反応式のモデルづくりの課題

私がよくやらせるのは次の4つです。

取り組ませる問題

(1)水の合成(化合) 2H2 + O2 → 2H2O

(2)マグネシウムの燃焼  2Mg + O2 → 2MgO

(3)酸化銀の分解  2Ag2O → 4Ag + O2

(4)酸化銅の還元(炭素を使って) 2CuO+C→2Cu+CO2

(5)炭酸水素ナトリウムの分解 2NaHCO3→Na2CO3 + H2O + CO2

まずは(1)~(4)をやらせてできることを確認します。
さらに生徒を一人指名して、 (5)をやらせたり、水の分解を解説させたりします。
色や数が矢印の前後で間違っていれば即座に間違いです。

学習班について

今回の化学反応式の班活動では、6人では多いと思います。マグネットが見えない、数えにくい生徒が出てきます。準備する数は増えますが、多くても4人がいいと思います。

この人数だと頭を寄せて話し合うことができます。私は6人は「生活班」、4人は「学習班」と決めて、班を作るときに「学習班を作ってください。」というふうに指示しています。

学習班をつくり、1人1つ分担を決めて、のこり3人に説明するのを課題にします。分からないときは3人がフォローして教えてあげるようにします。

化学反応式をマグネットで指導するコツまとめ

マグネットにはHやC、Oなど何も書かない。貼らない。これが一番です。

取り扱う原子記号は以下の通り。難しくしたり、種類を増やしたりしないようにしましょう。

H,He,C,N,O,S, Cl,Na,Mg,Al,Si,K,Ca,Fe,Cu,Zn,Ag,Ba,Au など

【理科編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説p48

マグネットのモデルで説明できたら、化学反応式を実際に書くことも練習しましょう。手作業だけで何となく分かっているつもりになっている場合もありますからね。