中学校学習指導要領解説【理科編】を分かりやすく読めるように、解説を解説するというコンテンツを作りました。
そこで、その中学校学習指導要領解説【理科編】はどのように構成されているか、まとめようと思います。
これを読めば、学習指導要領解説をどう読み解けばいいのか分かるはずです。
最後にラミネートして「しおり」として使えそうな「まとめプリント」をA4サイズで掲載しました。ダウンロードすれば、解説【理科編】を読むときのお供に使っていただけると思います。
中学校学習指導要領にどうして【解説】が必要なのか
中学校学習指導要領は1冊の書籍(PDFファイル版もあります)に、中学校の全教科の内容や関連法規の抜粋が載っています。
学習指導要領は、全国的に一定の教育水準を確保するために、各学校の教育課程の基準として国が告示しているものです。法律ではありませんが、法的基準性(法的拘束力)があるとされています。
学習指導要領が大綱的な基準を示しているので、その「解説」は、総則や各教科等の記述の意味や解釈などを詳細に説明するために作成されています。「解説」には法的拘束力はありません。
しかし学習指導要領だけでは、何をどう教えていいか困ってしまう先生も多いと思います。だからといって、教科書会社の教科書や指導書に頼るのも指導の根拠としては弱いでしょう。そのあいだを埋めるものとして、「解説」があるのだと考えるといいと思います。
また、中学校学習指導要領の理科編(p78~)は第1分野、第2分野それぞれに「1 目標」「2 内容」「3 内容の取扱い」があります。
「2 内容」には(1)~(7)まで単元ごとの内容に分かれていますが、それぞれの「内容の取扱い」についてさらに後ろにまとめられています。そのため、学習指導要領を読んでいると、各ページを行ったり来たりすることになります。
中学校学習指導要領解説【理科編】は、その行ったり来たりをなくすために、各「内容」の解説のすぐ後にそれぞれの「内容の取扱い」が書かれています。これが中学校学習指導要領解説【理科編】が分かりやすいとされる点です。
さらに、見出しをつけたり、行間をあけたり、色をつけたりなどしてくれれば読みやすいと思い、このコンテンツをつくったわけです。
中学校学習指導要領解説【理科編】の構成を把握する
中学校学習指導要領【理科編】は、どの段落になにが書かれているか決まっています。
これを知っているだけでも、読みやすくなると思います。
ここでは、第2分野(1)いろいろな生物とその共通点を例に、説明したいと思います。
学習指導要領の引用の部分から
(1)いろいろな生物とその共通点
身近な生物についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア いろいろな生物の共通点と相違点に着目しながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
イ 身近な生物についての観察,実験などを通して,いろいろな生物の共通点や相違点を見いだすとともに,生物を分類するための観点や基準を見いだして表現すること。
この四角に囲われた部分は、中学校学習指導要領【理科編】の内容です。解説として書かれている部分は四角で囲われていません。法的基準とされるのはこの四角のなかだけと言うこともできます。
ここには、「単元全体の枠組み」について書かれています。
「ア」は資質・能力の三つの柱のうち「知識・技能」について書かれています。
「イ」は資質・能力の三つの柱のうち「思考力・判断力・表現力等」について書かれています。
学習指導要領解説の各単元前段部分から
1段落目:既習事項
「小学校では、~」ではじまる部分は、小学校やこれまでの既習事項について書かれています。
学習の系統性を理解しておきましょう。授業の時には、
小学校5年生のときに、発芽について勉強したよね。じゃあ、これは何だっけ?
そんな言い方ができます。覚えている、覚えていないを確認して、生徒のレディネスを揃えるのにも役立ちます。
2段落目:大項目のねらい
「ここでは~」ではじまる箇所は、理科の見方・考え方を働かせて、どんなねらいを達成しようとしているのか書いています。
3段落目:思考・判断・表現の育成の考え方
「思考力、判断力、表現力等を育成するに当たっては~」については、思考力、判断力、表現力をどのようにして育成するか書かれています。
4段落目:特記事項・配慮事項
「また、ここでの分類は、~」のように、留意すべきことが特記されています。
学習指導要領解説の各単元後段部分から
(ア)生物の観察と分類の仕方
㋐ 生物の観察
校庭や学校周辺の生物の観察を行い,いろいろな生物が様々な場所で生活していることを見いだして理解するとともに,観察器具の操作,観察記録の仕方などの技能を身に付けること。
学習対象
ここでは「校庭や学校周辺の生物の観察を行う」ことが、学習の対象となります。
見方・考え方のヒント
「いろいろな生物が様々な場所で生活していること」に気づくことが、理科の見方・考え方のヒントになります。
学習プロセス
「見いだして理解する」というのが学習のプロセスを示しています。この文末表現については、次にまとめます。
中学校学習指導要領解説は「文末」に着目して読む
中学校学習指導要領【理科編】では、文章の最後の表現が何パターンかあります。
その文末表現に着目すると、内容の取扱いについて見えてきます。
【内容】
- 知る・・・・・・・・・・教師が情報を与えて、生徒が知る
- 理解する・・・・・・・・教師が導くことによって、生徒が理解する
- 見いだして理解する・・・生徒が自ら、関係性や規則性に気付いて理解する
- 関係付けて理解する・・・生徒が自ら、2つの対象を関係付けて理解する
- 認識する・・・・・・・・複数の理解から物事の本質や意味を深く理解する
【内容の取扱い】
- 扱う・・・・・・・・・・じっくりと扱う・重い扱い
- 触れる・・・・・・・・・軽く触れる程度・軽い扱い
これを見ると、どのように指導していくか見通しが立てられます。
ただ「知る」ので良ければ、教師が教えてしまっていいのです。
つぎの「理解する」ならば、生徒が理解できるように、段階的に教師が導いていきます。
「見出して理解する」ならば、事象と事象のつながり(関係性)に気付かせたり、実験結果からグラフを作成して法則性に気付かせたり、AすればBになると規則性に気づいたりするようにもっていくと良いのです。
「関係づけて理解する」ならば、いわゆる対照実験をしたり、AとBを比較させたりします。そうすることでその関係に気づくようにします。
「認識する」はこれまでの「理解する」を統合させて、本質的な部分を認識します。メタ認知をもつようになるといってもよいかもしれません。単元のまとめを書かせるときに、その域に達していることです。
解説の解説「しおり」、ダウンロードはこちら。
こちらから、上記内容をまとめたPDFをダウンロードできます。A4サイズでプリントアウトして、ラミネートしていただければ、中学校学習指導要領【理科編】のしおりとしても使えると思います。
学習指導要領は、教員にとっては欠かせない教科指導の指針です。これからも何度も目を通して理解を深めるようにしていきましょう。