中学校学習指導要領解説【理科編】第2分野(5)生命の連続性の解説

 学習指導要領

「中学校学習指導要領解説【理科編】(平成29年7月)」p99~の「第2分野(5)生命の連続性」についての解説です。

本文は中学校学習指導要領解説【理科編】のコピー&ペーストです。見出しや付箋、マーカーペンについては私が追記した部分ですので、ご注意ください。

先生方の研究授業やカリキュラムマネジメント、移行措置の確認などに生かしていただければ幸いです。

第2分野(5)生命の連続性

単元全体の枠組み

(5)生命の連続性
 生命の連続性についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 生命の連続性に関する事物・現象の特徴に着目しながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 生命の連続性について,観察,実験などを行い,その結果や資料を分析して解釈し,生物の成長と殖え方,遺伝現象,生物の種類の多様性と進化についての特徴や規則性を見いだして表現すること。また,探究の過程を振り返ること。

既習事項

 小学校では,第5学年で「植物の発芽,成長,結実」や「動物の誕生」について学習している。また,中学校では,第1学年で「(1)ア(イ)㋐ 植物の体の共通点と相違点」で花のつくりについて,第2学年で「(3)ア(ア)生物と細胞」について学習している。

大項目のねらい

  ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,生命の連続性についての観察,実験などを行い,生物の成長と殖え方の特徴や遺伝の規則性,及び長い時間の経過の中で生物は変化して多様な生物の種類が生じてきたことを見いだして理解させるとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

「思考・判断・表現」育成の考え方

  思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,生命の連続性について,見通しをもって観察,実験などを行い,その結果や資料を分析して解釈し,生命の連続性に関わる特徴や規則性を見いだして表現させるとともに,探究の過程を振り返らせることが大切である。その際,レポートの作成や発表を適宜行わせることも大切である。

特記事項・配慮事項

 なお,これらの学習を通して,生命の連続性が保たれていることや多様な生物の種類が生じてきたことについて認識を深め,生命を尊重する態度を育てることが重要である。

(ア)生物の成長と殖え方
 ㋐ 細胞分裂と生物の成長
 体細胞分裂の観察を行い,その順序性を見いだして理解するとともに,細胞の分裂と生物の成長とを関連付けて理解すること。

 ㋑ 生物の殖え方
 生物の殖え方を観察し,有性生殖と無性生殖の特徴を見いだして理解するとともに,生物が殖えていくときに親の形質が子に伝わることを見いだして理解すること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)の㋐については,染色体が複製されることにも触れること。
イ アの(ア)の㋑については,有性生殖の仕組みを減数分裂と関連付けて扱うこと。「無性生殖」については,単細胞生物の分裂や栄養生殖にも触れること。

 ここでは,細胞分裂や生物の殖え方に関する観察などを行い,細胞は分裂によって殖えること,生物の殖え方には有性生殖と無性生殖があることを見いだして理解させるとともに,無性生殖では子は親と同じ染色体をもつことになるが,有性生殖では両親から染色体を受け継ぐことを減数分裂と関連付けて理解させることが主なねらいである。

㋐ 細胞分裂と生物の成長について

 「(3)ア(ア)生物と細胞」では,生物の体が細胞からできていることについて学
習している。
 ここでは,体細胞分裂の観察を行い,体細胞分裂の過程には順序性があることを見いだして理解させるとともに,多細胞生物は細胞の分裂によって成長することを理解させることがねらいである。
 体細胞分裂については,染色体が複製されて二つの細胞に等しく分配され,元の細胞と同質の二つの細胞ができることを理解させる。体細胞分裂の順序性を見いださせる際には,染色体数が少なくて見やすい植物細胞を観察するとよい。さらに,例えば,映像などを活用して,体細胞分裂における染色体の動きを見せることなども考えられる。
 成長については,植物の根端などの観察を行い,細胞の分裂によって成長が起こることを理解させる。その際,細胞の数が増えるだけではなく,細胞自体が伸長,肥大していくことにも気付かせることが大切である。

㋑ 生物の殖え方について

 小学校では,第5学年で,魚には雌雄があり,生まれた卵は日がたつにつれて中の様子が変化してかえること,人は母体内で成長して生まれることについて学習している。また,「(1)ア(イ)㋐ 植物の体の共通点と相違点」で,胚珠が種子になることについて学習している。
 ここでは,生物の殖え方を観察し,有性生殖と無性生殖の違いを見いだして理解するとともに,生物が殖えていくときに親の形質が子に伝わることについて見いだして理解させることがねらいである。
 無性生殖については,単細胞生物の分裂や,栄養生殖に触れる。その際,実際に栄養生殖で殖えつつあるジャガイモやイチゴなどを提示したり,映像なども活用したりすることが考えられる。
 有性生殖については,無性生殖とは異なり,受精によって新しい個体が生じ,受精卵の体細胞分裂により複雑な体がつくられることを,カエルなどを例として捉えさせる。動物では,メダカやウニの発生の継続観察などを行わせることが望ましいが,映像などを活用することも考えられる。また,植物では,受精の様子を直接観察するのは困難であるので,花粉管の伸長の観察などを行わせたり,被子植物の受精の映像などを活用したりすることによって植物の生殖の過程を理解させることが考えられる。
 親の形質が子に伝わることについては,無性生殖では体細胞分裂によって殖えることから,全ての子の形質は同一になることを見いだして理解させる。また,有性生殖では,減数分裂によって両親の染色体が半数ずつ生殖細胞に分配されて受精によって受け継がれることから,全ての子の形質が同じになるとは限らないことに気付かせることが大切である。

 

(イ)遺伝の規則性と遺伝子
 ㋐ 遺伝の規則性と遺伝子
 交配実験の結果などに基づいて,親の形質が子に伝わるときの規則性を見いだして理解すること。

(内容の取扱い)

ウ アの(イ)の㋐については,分離の法則を扱うこと。また,遺伝子の本体が DNA であることにも触れること。

 ここでは,交配実験の結果などから形質の表れ方の規則性を見いだし,染色体にある遺伝子を介して親から子へ形質が伝わること及び分離の法則について理解させることがねらいである。

㋐ 遺伝の規則性と遺伝子について

 ここでは,一つの形質に注目して,形質が子や孫にどのように伝わっていくかについて考察させ,遺伝の規則性を見いだして理解させる。
 例えば,メンデルの交配実験の結果を分析して解釈し,子や孫の形質の表れ方には規則性があることに気付かせる。その際,染色体に関する図やモデルなどを活用して,その規則性は対になっている遺伝子が分かれて別々の生殖細胞に入ることによってもたらされることを取り上げる。その後,コインやカードなどを用いて交配のモデル実験を行わせて,規則性をもたらす仕組みを確認させることが考えられる。その際,交配のモデル実験における試行回数と得られる結果との関係に気付かせたり,モデル実験の操作や結果が何を意味するかなどを考えさせたりして,探究の過程を振り返らせることが考えられる。
 このような学習を通して,分離の法則について理解させるとともに,生物は親から遺伝子を受け継ぎ,遺伝子は世代を超えて伝えられることを理解させる。その際,遺伝子の本体が DNA という物質であることにも触れる。
 なお,現在,遺伝子や DNA に関する研究が進み,医療,食料,環境,産業など日常生活や社会に関わる様々な分野で,その研究成果が利用されるようになっている。このことについて,文献や情報通信ネットワークなどを活用して,理解を深めさせることが考えられる。

 

(ウ)生物の種類の多様性と進化
 ㋐ 生物の種類の多様性と進化
 現存の生物及び化石の比較などを通して,現存の多様な生物は過去の生物が長い時間の経過の中で変化して生じてきたものであることを体のつくりと関連付けて理解すること。

(内容の取扱い)

エ アの(ウ)の㋐については,進化の証拠とされる事柄や進化の具体例について扱うこと。その際,生物にはその生息環境での生活に都合のよい特徴が見られることにも触れること。また,遺伝子に変化が起きて形質が変化することがあることにも触れること。

 ここでは,現存の生物や化石の比較などを通して,現存の多様な生物は過去の生物が長い時間の経過の中で変化して生じてきたものであることを体のつくりと関連付けて理解させるとともに,生物の間のつながりを時間的に見ることを通して進化の概念を身に付けさせることがねらいである。

㋐ 生物の種類の多様性と進化について

 「(1)ア(イ)㋑ 動物の体の共通点と相違点」で,脊椎動物を五つの仲間に分類
できることについて学習している。
 ここでは,例えば脊椎動物では,魚類をはじめとする五つの仲間の間には,魚
類と両生類の幼生はえら呼吸,魚類・両生類・爬虫類は変温動物,魚類・両生類・爬
虫類・鳥類は卵生,魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類は全て脊椎をもつというように段階的に共通性が見られることや,化石についての考察などから,現存している生物は過去の生物が変化して生じてきたことに気付かせる。その際,「(2)ア(イ)地層の重なりと過去の様子」での示準化石などについての学習も踏まえながら,陸上生活をする生物は水中生活をするものから進化してきたことにも気付かせる。
 進化の証拠とされる事柄の例としては,始祖鳥のように,爬虫類と鳥類の両方の特徴をもつ生物の化石があること,脊椎動物のひれとあしのように起源が同じ器官が見られることなどが挙げられる。また,例えば哺乳類では,コウモリは翼を用いて空中で飛翔し,クジラはひれを用いて水中で泳ぐなど,同じ前肢でも現在の生息環境に都合のよい特徴が見られることにも触れる。
 また,遺伝子に変化が起きて形質が変化することがあることにも触れる。
 これらの学習を通して,現存している多様な生物は進化によって生じたものであることを理解させ,生命の歴史の長さを認識させることにより,生命を尊重する態度を育てることが大切である。

解説の解説

1 交配のモデル実験

 交配のモデル実験では、コインやカードなどさまざまな道具が試され、研究授業での話のネタの一つになることもあります。

 わたしのおすすめは、100円ショップで売っているアイスの棒です。当たりハズレが書かれているようなあの棒が、50本入り110円というお手頃価格で手に入ります。ちょうど手で持ちやすい長さ、染色体を模したようなデザインです。割りばしだと割るのに失敗することもありますし、カードだと折れたり、透けて見えることもあります。コインだと単価が高いと思います。

 アイスの棒だと、子供たちもピンときて、ニコッとしながら引いてくれます。

2 染色体、DNAのイメージ

 染色体はほぐすと染色糸、DNAとだんだん目に見えない細さになってきます。これをイメージさせるのに、わたしは毛糸を使っています。

 買ってきた状態だと太い染色体、引っ張って分ければDNAの2重らせん構造、というわけです。染色液で染めると赤いので、赤い毛糸を使っています。

 毛糸は3本で束になっているのが残念ですが、ほぐすときに1本と2本に分けて割いていくことができます。そこをツッコんできた生徒は今のところいません。あくまでもイメージだから、ということで見せています。