令和2年度は、令和3年度(平成33年度)からの新学習指導要領の全面実施に向けての、移行期間となります。
各学校で生徒たちの学習にモレが無いように、十分に内容を確認しておく必要があります。
東京書籍のサイトに「(中学校理科)新学習指導要領 移行期の指導計画と指導のポイント」が掲載されています。この資料は4つの領域ごとにまとめられているので、学年ごとにまとめなおしてみました。
ここでは、第2学年の移行内容について書いていきます。
【エネルギー】電流とその利用
放射線がここに来ました。2年生で放射線・・・。エネルギーは勉強していません。
【思考力・判断力・表現力等のポイント】
「見通しをもって課題を解決する方法を立案して」について、抵抗前後の電流の大きさや電熱線による発電量の大きさを調べる実験、誘導電流の実験で条件を変えて調べることなどが例示されています。
これらの実験は今までも行っていたと思います。それを見通しをもたせて、実験方法を考えさせて取り組ませるようになります。課題の提示を対話で導いて、段階的に行っていけば指導可能かと思います。
例えば、こんな感じでしょうか?
抵抗に電流が流れると、電流はどうなると思いますか?
どうやったら調べられるかな?
電流
「電流」の取り扱いで、「真空放電と関連付けながら放射線の性質と利用にも触れること」が追加されました。
3年生で教えていた「放射線の性質と利用」が、2年生に下りてきたことになります。
1年生で分光を勉強しましたが、3年生のエネルギーを勉強していません。そのため、放射線はエネルギーと関係付けるというよりは、電磁波とのつながりで教えていくことになります。
電流と磁界
変更ありません。
【粒子】化学変化と原子・分子
以前、日本化学会が「化合」を「化学変化」に直すように申し入れたと聞いたときは驚きましたが、どうやら項目名だけのようです。定義が変わったわけではないので、ちょっと安心しました。
【思考力・判断力・表現力等のポイント】
「見通しをもって課題を解決する方法を立案して」調べることは、「化学変化における物質の変化やその量的な関係」を見いだす実験が例示されています。
2年生なので、実験方法の立案が挙げられています。この実験計画を立てさせる時間的余裕を確保する必要があります。こちらも見通しをもって単元の時間配分をしなければいけません。
物質の成り立ち
「元素」と「元素記号」を新たに取り扱うことになります。「原子は記号で表される」という言い方が「物質を構成する原子の種類は記号で表される」になります。
「『物質を構成する原子の種類』を元素という」や記号は「元素記号」という風に変わります。本来、原子は実在する物、元素は概念として使い分けていますので、正常になったわけですが、その使い分けを中学生に求めることになります。悩むだろうな。
化学変化
違和感を感じるかもしれませんが、小項目名の「化合」が「化学変化」になりました。
たしかに、化学変化によって生じるものはすべて「化合物」です。「化合」という化学変化での生成物だけに対する呼び名ではありません。
あくまでも小項目名が変わっただけです。日本化学会が指摘したんですね。
2種類以上の純物質が結合して1つの化合物になる変化は、あくまでも「化合」です。
【生命】生物の体のつくりと働き
2年生でも、1・3年生と内容が錯綜します。移行時には十分に気をつける必要があります。
「観察器具の操作、観察記録の仕方などの基礎技能を身につけること」が追加されました。
「植物の体のつくりとはたらき」が1年生から2年生へ上がってきます。「生物の変遷と進化」については3年生に上がります。
結局、顕微鏡は何年生で教えるのがいいのでしょうか??理科の先生のなかでも意見が別れています。
【思考力・判断力・表現力等のポイント】
「見通しをもって解決する方法を立案」することについては、光合成に必要な物質や環境条件について調べる実験が示されています。
2年生の問題は、やることが多いのに解決方法の立案を求められるということです。こちらから教えてしまうのではなく、いかに生徒が実験方法を閃くのか、閃かせるのか、教師の腕が問われます。
生物と細胞
顕微鏡の扱いが2年生に入ります。1年生は外部形態なので、内部構造を見る2年生で顕微鏡を教えるというわけです。
植物の体のつくりと働き
種子植物の葉・茎・根の基本的なつくりの特徴を見いだし、それらを「光合成」「呼吸」「蒸散」の実験と関連付けて捉えさせます。
1年生の外部形態の復習にもなりますが、内部構造(細胞)の観察だけでなく、実験も必要になってきます。
動物の体のつくりと働き
消化系、循環系などの「器官系」についても教えることになります。病院に行くと聞くワードです。生徒にとっても、そこまでの負担はないと思います。
【地球】気象とその変化
「圧力・大気圧」が1年生から上がってきました。「自然の恵みと気象災害」が3年生から下りてきました。つまり教えることが増えました。
【思考力・判断力・表現力等のポイント】
「見通しをもって解決する方法を立案」して調べることは、継続的な気象観測において、気象要素間の関係を検証する観測を計画することが例示されています。
「規則性や関係性を見いだして表現すること」は、天気の変化や日本の気象が題材として挙げられています。
天気だけでなく、気温や湿度も観測するようにするということですね。気温計や湿度計が生徒の家にないこともありますから、教室で継続的に観測する必要があるでしょう。
最近は、時計といっしょになっているのもありますね。
気象観測
1年生の「圧力・大気圧」が上がってきます。圧力と大気圧を関連付けながら扱う必要がありますが、気象のなかで学ぶ関係上、大気圧が主、圧力が従というところでしょうか。
天気の変化
変更ありません。
日本の気象
変更ありません。
自然の恵みと気象災害
3年生から下りてきました。気象現象が、人間に恵みと災害をもたらすという自然の二面性について、2年生で学ぶことになります。ここまで気象を学んでいますので、それとの関連付けが図られます。
災害に対しては、情報収集や的確な判断、適切な行動が求められます。大規模気象災害、そこからの河川の決壊、土砂災害など、近年の被害は甚大です。中学生に求められる災害対応力を育成したいものです。