【先生から】卒業文集原稿「僕は不器用だ」を書きました【平成17年度】

 学級担任として

平成17年度に書いた卒業文集メッセージです。

この学年は1年生のときから見てきたのですが、卒業式では泣かなかったですね。

自分の学年の卒業式では泣かないのに、ほかの学年の卒業式では泣いてしまいます。

3年間の付き合いで、いろいろ知っているからかもしれません。不思議なものです。

りかこさん
りかこさん

先生が泣くところ見てみたいー

かに先生
かに先生

泣かない。ぜったいに泣かない。ぜったいぜったい…!

えび先生
えび先生

かに先生、ムリしなくていいんですよ。

かに先生
かに先生

うぐっ…

   

卒業文集「僕は不器用だ」

僕は不器用だ

人に何かを伝えることは難しい。自分が想っていることを相手に伝えるために、どれほど多くの言葉を使わなければいけないだろうか。

同じ経験をしてきたわけではないし、もっている辞書も違うだろう。想いを伝えることは簡単なことではない。いつも困難を感じてしまう。

自分の想いを伝えたい。でも伝わらない。僕は不器用だ。

  

大学に6年通って、指導教官から教えられたことの一つは、

「言葉ではなく行動で示せ」

ということだった。それは言葉で何を言っても、行動で示せなければ真実ではないということだった。実験結果を予測で言ってもムダで、「思うのは勝手だ、事実を出せ、実験をしろ」「言うのは簡単だ。やってみせろ」と迫られる。

すべて同じこと、レポートが書けなかった言い訳も、寝坊の言い訳も通じたことはなかった。

理科の教師(一人の科学者)として、社会人(一人の大人)として、常に「行動すること」を要求された。

そのために、何日も実験室に寝泊りして実験したり、正月も実験装置のメンテナンスに行ったり、研究室で徹夜で英語論文の翻訳もした。

いつも裏切ってばかりで、教授の要求に応えられたことは少なかったけど、「行動すること」の意味と大切さだけはよく分かった(つもりでいる)。

  

僕は不器用だ。言葉で人に想いを伝えるなんてできない。だから伝えたいことは行動で示す(示すように努力している、と言ったほうが正確かな)。

でもいつか自分の言葉で自分の想いを伝えたいな。この話もいつか分かってもらえるだろうか。みんなは僕の言いたいこと分かった?

みんな元気でね。夢を見つけて、夢とともにがんばってください。

  

あの教授には、今でも毎年会っています。夢の中で。

夜、夢のなかに出てきて、一言叱責したり、お説教したり、穏やかな笑顔だったりして、私に道を示してくれるのです。

卒業してから一度だけお会いしましたが、(いつか、先生に認められたい。)そう思って、今でもお世話になっています。