【中1】気体(酸素、二酸化炭素、水素、アンモニア)の学習の注意点

 理科の工夫・改善

酸素、二酸化炭素の名前を聞いたことがある中学生は多いでしょう。

エネルギー分野で水素は注目されていますし、アンモニアも名前は有名です。

このように私たちの身の回りには目に見えない気体が存在し、欠かせないものになっています。

ここでは中学1年で学習する「気体の性質と集め方」について、指導(学習)の際の注意点と合わせて解説します。

  

中学1年で登場する気体4種類

中学1年で扱う気体は主に4種類です。ほかにも塩素や硫化水素などがありますが、1年生の段階では紹介でとどめてよいと思います。

その4つとは酸素、二酸化炭素、水素、アンモニアです。気体を発生させて、その性質を調べることはいかにも理科の実験らしい学習です。

もうひとつ取り上げるなら窒素です。しかし窒素は空気中に大量にあるので、わざわざ発生させる必要がありません。そのため、逆に窒素がほしい場合には、ボンベを買うようになります。

  

「酸素」について

酸素の発生方法と性質についてです。二酸化マンガンの解説が難易度を上げています。

酸素の発生方法

(1)うすい過酸化水素水 + 二酸化マンガン
(2)過酸化水素水を加熱する

過酸化水素水は強アルカリですから、高濃度のまま扱うのは控えるべきです。

教科書では(1)のようにうすい過酸化水素水を扱います。このとき二酸化マンガンは触媒としての役割ですので、実際には反応していません。

二酸化マンガンのかわりに、ジャガイモやレバーなどで実験することもできます。身近な物質という意味で紹介するのはいいですが、現実にはあまりやりませんね。

触媒は化学反応を促進しますが、物質としては変わりません。つまり、薬品庫からいつまでも無くならないのですよね。

ちなみに中学校で「触媒」という言葉は扱いません。化学エネルギーもまだ学習していませんので、触媒の役割はますます理解しにくいと思います。

えび先生
えび先生

二酸化マンガンは、過酸化水素から酸素がつくられるのを手伝う役目があります。

酸素の集め方

酸素は水に溶けにくいので「水上置換法」です。

  

酸素の性質

ものが燃えるのを助けるはたらきがあります。「助燃性(じょねんせい)」と言います。カッコいいので教えています。

火のついた線香を近づけると、炎を上げて燃えます。これは暗記のポイントでもあります。もう線香といったら酸素で、マッチといったら水素です。

しかし、水上置換でぬれた試験管に線香がくっついてしまうと、線香の火は消えてしまいます。

すると生徒たちからは「火が消える」という結果が出てきます。あらかじめ、注意点として伝えておくべきところです。

酸素は「水に溶けにくい」です。このとき「水に溶けない」と言ってしまう生徒がいます。しかし、溶けにくいだけで溶けないわけではありません。

もしまったく溶けなかったら、お魚さんは呼吸ができません。そのように言うと、生徒たちは「あっ」という顔をします。細かいようですが、この「~しにくい」という言葉には意味があるのです。

  

「水素」について

水素の発生方法と性質などです。

水素の発生方法

(1)亜鉛 + うすい塩酸
(2)マグネシウム + うすい塩酸

値段が安いので亜鉛を扱います。粒状が扱いやすいと思います。花形も反応がいいです。粉末は反応が一気に進みますので集めにくいです。

水素は「金属」と「酸」で発生します。これはイオン化傾向で説明できますが、中1にはまだ難しいところです。3年生でイオン化傾向を学ぶときについでに復習するとよいと思います。

ただし、金や銀はイオン化傾向が小さいですから、水素は発生しません。発生されては困りますが。

水素の集め方

水素は水に溶けにくいので「水上置換法」です。

空気より軽いので「上方置換」で集めることもできます。マッチの火を近づけるときに指には気をつけましょう。

水素の性質

物質(分子)としては最も軽い気体です。マッチの火を近づけると、ポンと音をたてて燃えます。

この確かめの実験は音の印象が強いのですが、何本か行って生徒が慣れてきたところで、カーテンを閉めて暗くして行います。

個別に行うので全員が見えるとは限らないのですが、反応したときの火が見えたり、水ができたときの白い霧(水)が見えたりします。

  

「二酸化炭素」について

二酸化炭素の発生方法と性質についてです。

二酸化炭素の発生方法

(1)石灰石 + うすい塩酸
(2)炭酸水を加熱する。

石灰石のかわりに貝殻や卵の殻でも実験できます。卵の殻は家庭で集められますね。

二酸化炭素の集め方

空気より密度が大きく、水に少し溶けるので「下方置換法」で集めます。

二酸化炭素は水に少し溶けます。しかし気体の発生量を気にしないのであれば、「水上置換法」で集めるのが良いと思います。

定量的な実験なのか、定性的な実験なのか、触れることをお勧めします。

二酸化炭素の性質

二酸化炭素は水に溶けると「酸性」を示します。

強調しなくてはいけないのは、二酸化炭素が酸性なのではなく、水に溶けると酸性を示すということです。

水に溶けていない、気体の二酸化炭素は中性です。空気を吸っても味はしませんよね。

二酸化炭素は水に溶けると酸性になる

いま、炭酸水はどこででも売っています。飲んだことがあるという生徒も多いでしょう。あの苦さは水に溶けた二酸化炭素の味ということになります。

二酸化炭素が溶けた水とはなにか。それは「雨」です。酸性雨のことではありません。雨は上空から降ってくるあいだに二酸化炭素が溶けて酸性になります。そもそも雨は酸性なのです。pHでいうと5.6にもなります。

つまり、近年問題になっている酸性雨というのは、pHが5.6より小さい雨のことをいいます。

雨水を集めてきて、リトマス試験紙が赤くなって「酸性雨だ~!」と言い出す生徒もいますので、気を付けるべきところです。

二酸化炭素を入れると石灰水は白濁する

二酸化炭素は石灰水を白くにごらせます。生徒には石灰水にストローで呼気を吹き込み続けることで白くにごるのを確かめます。

1年生では早いのですが、化学反応式でいうとこうなります。

Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

炭酸カルシウムは水に溶けないので、白濁する(白くにごる)わけです。

  

ただし、ここに注意点があります。

さらに大量の二酸化炭素を吹き込むと、透明になってしまうのです。

CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2

これは炭酸水素カルシウムは水に溶けるという性質があるからです。

  

先生がガスボンベでやるときに調子に乗ってやってしまいがちなことです。

きちんと説明しないと「二酸化炭素は石灰水を白くにごらせる」という基本を超えるインパクトを与えてしまうので気をつけましょう。

2年生で化学反応式や炭酸水素カルシウムの分解を学んでから演示するのがよいと思います。

えび先生
えび先生

調子に乗ったんですね…?

かに先生
かに先生

若いころの苦い思い出。

「アンモニア」について

アンモニアの発生方法と性質です。

アンモニアの発生方法

(1)塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを混ぜて加熱する。
(2)塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムを混ぜて水を加える。
(3)アンモニア水を加熱する(沸騰石を入れる)

(3)は手抜きの感じがありますが、先生が手っ取り早くやるにはいいです。突沸すると大変危険なので、沸騰石を入れるのを忘れないようにしましょう。ガスバーナーで加熱するというよりも、すこしかざして温めるだけで気体は出てきます。

アンモニアの集め方

空気より密度が小さく、水に非常によく溶けるので「上方置換法」で集めます。

水上置換や下方置換ではできませんので、これまでの3種の気体と比較して、学んだ甲斐があります。

アンモニアの性質

アンモニアの性質と言えば、あの刺激臭です。くさいと分かっていても、ぜひかがせたいです。

(1)アンモニア特有の刺激臭

勉強してきている生徒は「刺激臭!」と言ってしまいますが、そこは訂正します。

えび先生
えび先生

刺激臭にもいろいろあるから、「アンモニア特有の」ってつけてね。

このあと塩素や塩化水素が出てきます。そのときにも、この「○○特有の」を使うようにします。

(2)水に溶けるとアルカリ性を示す

こちらも二酸化炭素のときと同じで、「水に溶けると」という言い方が大切です。

空気中の湿気でリトマス試験紙が湿っていれば色が変わることもありますが、乾燥したリトマス試験紙だと色が変わらないことがあります。

そもそも、酸性、中性、アルカリ性というのは、水に溶けたときの物質の性質を指していう言い方です。アンモニアは水に溶けて電離することで、塩基OH-が増えます。

NH3 + H2O → NH4+ + OH-

  

それ以外に取り上げたい気体

酸素、二酸化炭素、水素、アンモニアについて解説しました。

あまり参考書などに取り上げられない内容、実際に指導していて気をつけなくてはいけなかった内容を紹介したつもりです。

ほかにも、窒素、塩素、塩化水素、硫化水素など紹介したい気体もあります。教科書に取り上げられている気体を、簡単にまとめておくといいと思います。