「中学校学習指導要領解説【理科編】(平成29年7月)」p92~の「第2分野(3)生物の体のつくりと働き」についての解説です。
本文は中学校学習指導要領解説【理科編】のコピー&ペーストです。見出しや付箋、マーカーペンについては私が追記した部分ですので、ご注意ください。
先生方の研究授業やカリキュラムマネジメント、移行措置の確認などに生かしていただければ幸いです。
第2分野(4)気象とその変化
単元全体の枠組み
(4)気象とその変化
身近な気象の観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 気象要素と天気の変化との関係に着目しながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。
イ 気象とその変化について,見通しをもって解決する方法を立案して観察,実験などを行い,その結果を分析して解釈し,天気の変化や日本の気象についての規則性や関係性を見いだして表現すること。
既習事項
小学校では,第4学年で「天気の様子」,「空気と水の性質」,第5学年で「天気の変化」について学習している。
大項目のねらい
ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,身近な気象の観察,実験などを行い,その観測記録や資料を基に,気象要素と天気の変化の関係に着目しながら,天気の変化や日本の天気の特徴を,大気中の水の状態変化や大気の動きと関連付けて理解させるとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。
「思考・判断・表現」育成の考え方
思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,気象とその変化に関する自然の事物・現象について,見通しをもって課題を解決する方法を立案して観察,実験などを行い,その結果を分析して解釈し,天気の変化や日本の気象についての規則性や関係性を見いだして表現させることが大切である。
その際,レポートの作成や発表を適宜行わせ,科学的な根拠に基づいて表現する力などを育成することも大切である。
特記事項・配慮事項
また,天気とその変化に関する学習を進める際には,継続的な気象観測の機会を設け,興味・関心を高めるようにする。
なお,天気の変化や日本の天気の特徴が大気中の水の状態変化や大気の動き,海洋の影響と関連していることを捉えさせ,気象とその変化について総合的に見ることができるようにすることが重要である。
(ア)気象観測
㋐ 気象要素
気象要素として,気温,湿度,気圧,風向などを理解すること。また,気圧を取り上げ,圧力についての実験を行い,圧力は力の大きさと面積に関係があることを見いだして理解するとともに,大気圧の実験を行い,その結果を空気の重さと関連付けて理解すること。
㋑ 気象観測
校庭などで気象観測を継続的に行い,その観測記録などに基づいて,気温,湿度,気圧,風向などの変化と天気との関係を見いだして理解するとともに,観測方法や記録の仕方を身に付けること。
(内容の取扱い)
ア アの(ア)のア◯の「大気圧」については,空気中にある物体にはあらゆる向きから圧力が働くことにも触れること。
ここでは,主な気象要素である気温,湿度,気圧,風向,風速について理解させ,観測器具の基本的な扱い方や観測方法と,観測から得られた気象データの記録の仕方を身に付けさせることが主なねらいである。
㋐ 気象要素について
小学校では,第4学年で気温について,第5学年で雲の量や天気について学習している。第4学年では,閉じこめられた空気を圧すと体積は小さくなり,体積が小さくなると圧し返す力は大きくなることについて学習している。
ここでは,気象観測を行うため,主な気象要素である気温,湿度,気圧,風向,風速についての表し方を理解させ,これらの気象要素の中から「気圧」を取り上げ,圧力は力の大きさと面積に関係があることを見いだして理解させることがねらいである。
湿度については大気中に水蒸気が含まれている度合いを表し,風向については観測地点に吹いてくる風の方位を表し,風速については空気が1秒あたりに進む距離として表すことを理解させる。
気圧については,はじめに,圧力についての実験を行い,圧力は力の大きさと面積に関係があることを理解させる。例えば,スポンジなどの柔らかい物体に接触面積を変えて同じ力を加えたときのへこみ方の違いを調べさせ,へこみ方は接触面積と関係があるという圧力の考え方を見いださせ,圧力は単位面積当たりの力の大きさで表されることを理解させる。その上で,大気圧については,観察,実験を通して,その結果を空気の重さと関連付けて理解させる。その際,空気中にある物体にはあらゆる向きから圧力が働くことにも触れる。例えば,空き缶を大気圧による力でへこませる実験などを行い,空気の圧力の存在を理解させる。また,圧力容器などに詰まった空気を大気中に放出して,その前後の質量を測定し,空気には重さがあることを見いださせ,空気の重さと大気圧を関連付けて理解させる。さらに,例えば,校外学習などを利用し,携帯気圧計(高度計)による大気圧測定などを通して,大気圧は,高度によって変わることや同じ観測点であっても時間とともに変化することを理解させることも考えられる。
㋑ 気象観測について
小学校では,第4学年で,天気によって1日の気温の変化の仕方に違いがあること,第5学年で,天気の変化は雲の量や動きと関係があることについて学習している。
ここでは,継続的な気象観測を通して,様々な気象現象の中に規則性があることを見いだして理解させるとともに,観測方法や記録の仕方を身に付けさせることがねらいである。
例えば,時間の変化に伴う気温や湿度などの気象要素間の関係を見いだす課題を設定し,それを検証するために,観測の場所や器具,期間,間隔について観測の計画を立てさせ,観測記録から分析して解釈させ,各気象要素間に関係があることを見いだして理解させる。その際,例えばデータの連続性を補うため,自記温度計,自記湿度計,自記気圧計などの活用を図ることも考えられる。また,アメダス(AMeDAS;地域気象観測システム)などの地域の気象情報を自らの観測結果に加えて考察させることも考えられる。
なお,気象観測は,前線の通過が予想されるときや季節に特徴的な天気がみられるときを利用して継続的に行い,観測の技能を身に付けさせる。ここでの観測記録を,「(イ)天気の変化」や「(ウ)日本の気象」の学習で活用することが考えられる。
(イ)天気の変化
㋐ 霧や雲の発生
霧や雲の発生についての観察,実験を行い,そのでき方を気圧,気温及び湿度の変化と関連付けて理解すること。
㋑ 前線の通過と天気の変化
前線の通過に伴う天気の変化の観測結果などに基づいて,その変化を暖気,寒気と関連付けて理解すること。
(内容の取扱い)
イ アの(イ)の㋐については,気温による飽和水蒸気量の変化が湿度の変化や凝結に関わりがあることを扱うこと。また,水の循環にも触れること。
ウ アの(イ)の㋑については,風の吹き方にも触れること。
ここでは,霧や雲の発生,前線の通過に伴う天気の変化などについて,それが起こる仕組みと規則性を理解させ,霧や雲の発生についての観察,実験を行うための技能を身に付けさせることが主なねらいである。
㋐ 霧や雲の発生について
小学校では,第4学年で,水は蒸発し水蒸気となって空気中に含まれること,空気が冷やされると水蒸気は水になって現れることについて学習している。
ここでは,霧や雲の発生についての観察,実験を行い,大気中の水蒸気が凝結する現象を気圧,気温及び湿度の変化と関連付けて理解させることがねらいである。例えば,窓や鏡,コップがくもるなど大気中の水蒸気が水滴に変化する現象から露点の測定を行う。
霧については,気温が下がると飽和水蒸気量が小さくなるため湿度が上がるという規則性を理解させ,気温の低下に伴って大気中の水蒸気が凝結して霧が発生することを理解させる。
雲の成因については,高度による大気圧の変化と,大気の上昇に伴う気温の低下を取り上げる。例えば,密閉された袋が高度変化に伴う気圧の低下によって膨らむ現象などを取り上げることが考えられる。
また,ここでは雨,雪などの降水現象に関連させて,水の循環については,太陽のエネルギーによって引き起こされることにも触れる。
㋑ 前線の通過と天気の変化について
小学校では,第5学年で,雲の量や動きが天気の変化と関係することや映像などの気象情報を用いて天気の変化が予測できることについて学習している。
ここでは,前線の通過によって起こる気温,湿度,気圧,風向,天気の変化などを,暖気や寒気と関連付けて理解させることが主なねらいである。
気象観測などのデータや天気図から,前線付近の暖気と寒気の動きに気付かせ,前線の通過に伴う天気の変化について理解させる。その際,高気圧,低気圧のまわりの風の吹き方に触れる。
前線の構造については,前線が通過する際の気温,湿度,気圧,風向,風速,天気の変化,雲の種類の観測結果や実際の経験と関連付けて理解させる。例えば,寒冷前線が通過する際の特徴として,短時間の比較的強い降雨,雷,通過後の気温の低下,風向の変化などの現象が観測できることから,寒冷前線に伴う暖気,寒気の入れ替わりを考察させることなどが考えられる。その際,暖気,寒気のぶつかり合いを表すモデル実験などの方法を工夫して前線の構造についての理解を深めることが考えられる。
(ウ)日本の気象
㋐ 日本の天気の特徴
天気図や気象衛星画像などから,日本の天気の特徴を気団と関連付けて理解すること。
㋑ 大気の動きと海洋の影響
気象衛星画像や調査記録などから,日本の気象を日本付近の大気の動きや海洋の影響に関連付けて理解すること。
(内容の取扱い)
エ アの(ウ)の㋑については,地球を取り巻く大気の動きにも触れること。また,地球の大きさや大気の厚さにも触れること。
ここでは,天気図や気象衛星画像などを資料として,日本の天気の特徴を気団と関連付けて理解させるとともに,日本の気象を日本付近の大気の動きや海洋の影響に関連付けて理解させることが主なねらいである。
㋐ 日本の天気の特徴について
小学校では,第5学年で,台風による天気の変化について学習している。
ここでは,天気図や気象衛星画像から,気圧配置と風の吹き方や天気の特徴との関係を見いださせるとともに,日本の天気の特徴を日本周辺の気団と関連付けて理解させることがねらいである。
気団の特徴は,それが発生した場所の気温や大気中に含まれる水蒸気の量によって決まることを取り上げる。気団が発達したり衰退したりすることで,季節に特徴的な気圧配置が形成され,日本の天気に特徴が生じることを,天気図や気象衛星画像,気象データを比較することで理解させる。例えば,シベリア気団は冬季に大陸で形成されることから,その特徴は寒冷で乾燥していて,シベリア気団の発達と冬の天気が密接に関わっていることに気付かせることが考えられる。また,台風の進路が夏から秋にかけて変化していることに気付かせ,台風の進路が小笠原気団の発達や衰退と密接に関わっていることを理解させることが考えられる。
㋑ 大気の動きと海洋の影響について
ここでは,日本の気象を日本付近の大気の動きや海洋の影響に関連付けて理解させることがねらいである。
日本付近の大気の動きについては,1週間程度の天気図や気象衛星画像の変化,上空の風向などの観測データを用いて捉えさせる。
例えば,温帯低気圧や移動性高気圧が西から東へ移動していくことや,日本付近の気象衛星画像の動画などの雲の移動の様子から,日本の上空には一年中西から東へ偏西風が吹いていることに気付かせることなどが考えられる。その際,地球を取り巻く大気の動きや地球の大きさに対して気象現象の起こる大気の層の厚さがごく薄いことにも触れる。
また,日本の気象への海洋の影響については,日本の天気に影響を与える気団の性質や季節風の発生,日本海側の多雪などの特徴的な気象に,海洋が関わっていることを理解させる。例えば,全国のアメダスのデータと天気図や気象衛星画像などを用いて,冬に北西の季節風が顕著なのは,シベリアで発達する高気圧に対して海洋上が低気圧となるためであることなどから海洋の影響を理解させることが考えられる。その際,日本がユーラシア大陸の東岸に位置するために,日本付近の気象は大陸の影響を受けながらも海洋の影響を大きく受けていることを取り上げることが考えられる。
(エ)自然の恵みと気象災害
㋐ 自然の恵みと気象災害
気象現象がもたらす恵みと気象災害について調べ,これらを天気の変化や日本の気象と関連付けて理解すること。
ここでは,気象現象がもたらす降水などの恵み及び台風や前線などによる大雨・大雪や強風による気象災害を調べさせ,それらを「(イ)天気の変化」と「(ウ)日本の気象」の学習を踏まえて理解させることがねらいである。
㋐ 自然の恵みと気象災害について
小学校では,第5学年で,流れる水の働きと土地の変化,天気の変化について学習している。
ここでは,気象現象は,住みよい環境や水資源などの恩恵をもたらしていることを調べさせ,自然が人々の豊かな生活に寄与していることに気付かせる。また,資料などを基に,台風や前線などによる大雨・大雪や強風による気象災害について調べさせ,天気の変化や日本の気象と関連付けて理解させる。
例えば,台風について扱う場合は,被害をもたらした過去の台風の特徴を取り上げるとともに,台風の進路に基づいて強風や高潮などによる災害の発生した状況を整理させる学習が考えられる。また,洪水について扱う場合は,気象庁が発表する各種情報や警報などを取り上げるとともに,洪水の記録や資料などから災害を起こした大雨,融雪などの特徴,浸水地域と土地の特徴などを整理させる学習が考えられる。
解説の解説
1 学区の場所によって話し方を変える
学校がどこにあるかによって、気象災害の話の内容は変えるべきです。学校周辺、学区周辺まで、各種のハザードマップをよく見てから話しましょう。
生徒の自宅が浸水地域に入っている場合、安易な発言は当該生徒を不安にさせますし、場合によっては「いじめ」の種をまくことになりかねません。
さすがに他県に住んでいる親戚のことまで配慮するのは難しいですが、生徒がつぶやいてきたら即座にそれに応答すべきです。「危険だね」は過剰だし、「大丈夫だよ」は無責任です。
「そう、それは気になるね。今度会ったら大丈夫なのか話を聞いてみたら?」
生徒のことをよく考えて伝えましょう。好むと好まざると、リスクの理解はあったとしても、そこに住まざるを得なくてそこに住んでいる人がほとんどなのですから。