中学校学習指導要領解説【理科編】第2分野(6)地球と宇宙の解説

 学習指導要領

「中学校学習指導要領解説【理科編】(平成29年7月)」p104~の「第2分野(6)地球と宇宙」についての解説です。

本文は中学校学習指導要領解説【理科編】のコピー&ペーストです。見出しや付箋、マーカーペンについては私が追記した部分ですので、ご注意ください。

先生方の研究授業やカリキュラムマネジメント、移行措置の確認などに生かしていただければ幸いです。

第2分野(6)地球と宇宙

単元全体の枠組み

(6)地球と宇宙
 身近な天体の観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 身近な天体とその運動に関する特徴に着目しながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 地球と宇宙について,天体の観察,実験などを行い,その結果や資料を分析して解釈し,天体の運動と見え方についての特徴や規則性を見いだして表現すること。また,探究の過程を振り返ること。

既習事項

 小学校では,第3学年で「太陽と地面の様子」,第4学年で「月と星」,第6学年で「月と太陽」について学習している。

大項目のねらい

 ここでは,理科の見方・考え方を働かせ,身近な天体の観察,実験などを行い,その観察記録や資料などを基に,地球の運動や太陽系の天体とその運動の様子を関連付けて理解させるとともに,それらの観察,実験に関する技能を身に付けさせ,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

「思考・判断・表現」育成の考え方

 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,地球と宇宙について,見通しをもって観察,実験などを行い,その結果や資料を分析して解釈し,天体の運動と見え方についての特徴や規則性を見いだして表現させるとともに,探究の過程を振り返らせることが大切である。その際,レポートの作成や発表を適宜行わせることも大切である。

特記事項・配慮事項

 また,地球と宇宙に関する学習を進める際には,身近な天体を継続的に観察する機会を設け,興味・関心を高めるようにする。
 なお,観察者の視点(位置)を移動することで,天体の運動と見え方を関連させて捉えることができるようにすることが重要である。

 

(ア)天体の動きと地球の自転・公転
 ㋐ 日周運動と自転
 天体の日周運動の観察を行い,その観察記録を地球の自転と関連付けて理解すること。
 ㋑ 年周運動と公転
 星座の年周運動や太陽の南中高度の変化などの観察を行い,その観察記録を地球の公転や地軸の傾きと関連付けて理解すること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)の㋑の「太陽の南中高度の変化」については,季節による昼夜の長さや気温の変化にも触れること。

 ここでは,太陽や星座の日周運動の観察を行い,天体の日周運動が地球の自転による相対運動であることを理解させるとともに,季節ごとの星座の位置の変化や太陽の南中高度の変化を調べ,それらの観察記録を,地球が公転していることや地軸が傾いていることと関連付けて理解させ,天体の動きを観察する技能を身に付けさせることが主なねらいである。

㋐ 日周運動と自転について

 小学校では,第3学年で,日陰の位置が太陽の位置によって変わること,第4学年で,月や星が時刻の経過に伴って位置を変えること,第6学年で,月の位置や形と太陽の位置との関係について,地球上に視点を置いて学習している。
 ここでは,観察した太陽や星の日周運動が,地球の自転によって起こる相対的な動きによるものであることを理解させることがねらいである。
 例えば,透明半球を用いて太陽の日周運動の経路を調べたり,天球の各方位の星座の見かけの動きを観察したり,長時間にわたり撮影した星座の写真を活用したりして,太陽や星の天球上の見かけの動き方を調べ,それらの見かけの動きと地球が自転していることとを関連付けることが考えられる。その際,天体の動きを適切に記録できるようにすることも大切である。なお,観察記録を地球の自転と関連付けて考察させるためには,観察者の視点(位置)を,自転する地球の外に移動させる必要があることから,天球儀や地球儀を用いたモデル実験を行い,考察させることなどが考えられる。また,コンピュータシミュレーションを用いて視覚的に捉えさせるなどの工夫が考えられる。

㋑ 年周運動と公転について

 ここでは,同じ時刻に見える星座の位置が変わるのは,地球の公転による見かけの動きであることを理解させる。また,太陽の南中高度や,日の出,日の入りの時刻などが季節によって変化することを,地球の公転や地軸の傾きと関連付けて理解させることがねらいである。
 例えば,同じ時刻に見える星座の位置を一定期間ごとに観察させ,星座の位置が東から西へ少しずつ移動することに気付かせる。そして,観察記録を,太陽を中心とした地球の公転と関連付けて考察させる。また,例えば,太陽を中心に公転する地球とその外側にそれぞれの季節の代表的な星座を描いた図を配したモデルを活用し,地球のモデルを動かすことにより,見える星座が変わっていくことから,年周運動と地球の公転の関連を理解させる。その上で,ある時刻のある方位に見える星座が季節によって異なることを説明させることなどが考えられる。「㋐ 日周運動と自転」と同様,観察者の視点(位置)を公転する地球の外に移動させて考えさせることが大切である。その際,コンピュータシミュレーションを用いて視覚的に捉えさせるなどの工夫が考えられる。
 地軸の傾きについては,例えば,季節ごとに太陽の南中高度を継続的に観測させ,それらの年周的な変化を,地軸が傾いていることと関連付けて理解させることが考えられる。その際,太陽の南中高度の変化に伴う昼夜の長さや気温の変化に触れ,さらに,四季の生じる理由を取り上げることなどが考えられる。

 

(イ)太陽系と恒星
 ㋐ 太陽の様子
 太陽の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,太陽の特徴を見いだして理解すること。

 ㋑ 惑星と恒星
 観測資料などを基に,惑星と恒星などの特徴を見いだして理解するとともに,太陽系の構造について理解すること。

 ㋒ 月や金星の運動と見え方
 月の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,月の公転と見え方を関連付けて理解すること。また,金星の観測資料などを基に,金星の公転と見え方を関連付けて理解すること。

(内容の取扱い)

イ アの(イ)の㋐の「太陽の特徴」については,形,大きさ,表面の様子などを扱うこと。その際,太陽から放出された多量の光などのエネルギーによる地表への影響にも触れること。


ウ アの(イ)の㋑の「惑星」については,大きさ,大気組成,表面温度,衛星の存在などを取り上げること。その際,地球には生命を支える条件が備わっていることにも触れること。「恒星」については,自ら光を放つことや太陽もその一つであることも扱うこと。その際,恒星の集団としての銀河系の存在にも触れること。「太陽系の構造」については,惑星以外の天体が存在することにも触れること。

エ アの(イ)の㋒の「月の公転と見え方」については,月の運動と満ち欠けを扱うこと。その際,日食や月食にも触れること。また,「金星の公転と見え方」については,金星の運動と満ち欠けや見かけの大きさを扱うこと。

 ここでは,太陽の観察を行い,その観察記録や資料から,太陽の形や大きさ,表面の様子などの特徴を見いだして理解させるとともに,観測資料などから,惑星と恒星の特徴や太陽系の構造を理解させる。また,月の動きや見え方の観察を行い,月の観察記録などや金星の観測資料から,見え方を月や金星の公転と関連付けて理解させるとともに,太陽の表面,月の動きや形を観察したり記録したりする技能を身に付けさせることが主なねらいである。

㋐ 太陽の様子について

 小学校では,第3学年で,太陽によって地面が暖められることについて学習している。
 ここでは,観察記録や資料に基づいて,太陽は太陽系で最も大きいこと,自ら光を放出している天体であること,球形で自転していることを見いだして理解させることがねらいである。
 例えば,天体望遠鏡で太陽表面の黒点の観察を数日行い,それらの観察記録や写真,映像などの資料を基に,太陽表面の特徴を理解させる。その際,黒点の形状や動きなどの様子から,太陽は球形で自転していることを見いだして理解させることが考えられる。また,太陽から放出された多量の光や熱のエネルギーは,地球における大気の運動や生命活動に影響を与えていることにも触れる。
 なお,太陽の観察に当たっては,望遠鏡で直接太陽を見ることのないよう配慮する必要がある。

㋑ 惑星と恒星について

 小学校では,第4学年で,明るさや色の違う星があることや,星座を構成する星の並び方は変わらないことについて学習している。
 ここでは,観測資料などを基に,惑星と恒星などの特徴を見いだして理解させるとともに,太陽系の構造を理解させることがねらいである。
 惑星の特徴については,大きさ,密度,大気組成,表面温度,衛星の存在を取り上げる。また,各惑星の特徴を理解させるためには,惑星探査機や大型望遠鏡による画像などを活用することが考えられる。惑星は大きさによって,地球を代表とするグループと木星を代表とするグループに分けられることを見いださせ,大気組成や表面温度を比較することによって地球には生命を支える条件が備わっていることにも触れる。
 太陽系の構造を取り上げる際に,太陽や各惑星の位置や大きさの関係をモデルとして表すことは,太陽系の構造を概観するために効果的である。さらに,太陽系には惑星以外にも,小惑星や彗星,冥王星などの天体が存在することにも触れる。
 恒星の特徴については,自ら光を放つこと,太陽も恒星の一つであることを理解させる。また,太陽以外の恒星を観察しそれらが点にしか見えないことや常に相互の位置関係が変わらないことから,恒星は,太陽系の天体と比べて極めて遠距離にあることに気付かせて理解させる。その際,恒星が集団をなし銀河系を構成していることにも触れる。

㋒ 月や金星の運動と見え方について

 小学校では,第6学年で,月の形の見え方が太陽と月の位置関係によって変わることについて学習している。
 ここでは,月が約1ヶ月周期で満ち欠けし,同じ時刻に見える位置が毎日移り変わっていくことを,月が地球の周りを公転していることと関連付けて理解させるとともに,金星の観測資料などから,金星の見かけの形と大きさの変化を,金星が地球の内側の軌道を公転していることと関連付けて理解させることがねらいである。
 月の運動と見え方については,例えば,日没直後の月の位置と形を継続的に観察し,その観察記録や写真,映像などの資料を基に,月の見え方の特徴を見いださせ,それを太陽と月の位置関係や月の運動と関連付けて考察し理解させる。また,日食や月食が月の公転運動と関わって起こる現象であることにも触れる。
 金星の運動と見え方については,観測資料を基に金星の見かけの形と大きさが変化することを見いださせる。その上で,例えば,地球から見える金星の形がどのように変化するかという課題を解決するため,太陽と金星の位置関係に着目してモデル実験の計画を立てて調べさせる。その後,課題に対して実験方法や考察が妥当であるか探究の過程を振り返らせることが考えられる。その際,観察者の視点(位置)を移動させ,太陽,金星,地球を俯瞰するような視点と,地球からの視点とで考えさせることが大切である。