楽しい時間はあっという間で、たいくつな時間はとても長く感じます。
この時間の流れの認知について、どうしてそのように感じるのか、実はまだわかっていません。
視覚を司る「目」は、光の刺激を受けて反応しています。嗅覚を司る「鼻」は、空気中の化学物質を刺激として反応しています。
時間を感じる刺激とは?
では、時間を感じるための刺激とは何でしょうか。
ふだん、時間が経ったなと分かるのは、時計があるからです。時計を見て、どれだけの時間が経過したかを認識します。
しかし、時計が発明される前でも時間の感覚はあったはずです。では太陽や星の動きでしょうか。
ただ、目をつぶっていても時間の流れは感じます。
時間という感覚を伝達するしくみや脳の部位は、まだ見つかっていません。
刺激を受けると、刺激の種類に合わせて五感のそれぞれに対応する脳の部位が活性化します。時間に対しては、特定の反応がないのです。
いまのところ、時間の認知は脳全体で行っているのだろうと考えられています。
脳科学や心理学による研究の成果に期待しましょう。
時間の認識を逆手に取る行動変容
アナログ時計はチクタクと針が動く音が聞こえます。これが耳障りという人もいますが、これを逆手に取った研究成果があります。
単純なパソコン作業をするときに、違和感のない範囲で針の進む速さを速めます。30%くらい速くても大丈夫だと思います。
そうすると、作業効率がアップしたのです。
時計を目の前において直視している必要はなく、感覚として感じられればいいようです。チクタクと音が聞こえたり、ときどき視界に入ってくる、そのようなレベルで無意識に知覚できればいいようです。
これだけで作業効率が上がる結果が出ています。
確かに、テレビ録画を早見再生しながら部屋の片付けをしていると、早く終わったということが経験的にあります。
反対に、針の進む速さを遅くすることも使えます。
健康のためにゆっくり食事を取りましょう。と言われることがあります。早食いの人は遅い人よりも体重が5~8kg大きいという報告もあります。早食いの結果、BMIが高くなったり、肥満や糖尿病のリスクが高まったりするのです。
ではゆっくり食べるためにどうするのか?時計の針を遅くするのです。
少し遅い時計を食卓に置くことで、食事時間を伸ばすことができました。食事時間が伸びれば、噛む回数を増やしたり、口に入れる量を減らしたりすることにもつながります。
30回噛みなさいと言われても、言われた時しかやりません。無意識に働きかけて、無意識に健康につながるのならいいですね。(給食の時間には無理でしょうが)
「クロノス時間」と「カイノス時間」
時間には「クロノス時間」と「カイノス時間」というのがあります。
「クロノス」「カイノス」はギリシャ語です。クロノス時間は物理的時間を意味し、カイノス時間は意味的時間を意味します。
よく「若いときの1年と年を取ってからの1年は感じ方が違う」とか、「年を取ると1年があっという間だ」と聞きます。「楽しい時間はあっという間で、たいくつな時間はとても長く感じる」というのも同じです。
これは「若い人も高齢者もクロノス時間は同じだが、カイノス時間は異なる」というように言えます。
仕事や食事の時間に、クロノス時間を少しコントロールすることで、カイノス時間を変えることができるというのは面白いですね。


