毎年3月1日はその年度に書いた卒業文集の原稿をアップしているので、今年度も掲載します。
学級担任のカテゴリーですが、今年は小学校の管理職としての文集原稿を紹介します。小学校の管理職なので、今までのように、中学生向けではないエピソードを盛り込んでいます。
といっても難しいことは書いていません。保護者に向けたメッセージを加えただけですので、担任の先生にとっても大事なことかと思います。
A5ギリギリに収まるように、行間やフォントサイズを調整しました。少しでも先生方の参考になれれば幸いです。
卒業文集原稿「Beyond the Rainbow」
私には娘が二人います。今、小2と年長さんです。いわゆる「目に入れても痛くない」という存在です。どんなことがあろうとも、この世界にこの子達の父親は自分しかいないんだということを教えてくれる、大切な存在です。
見失うものの多いコロナ禍で、改めて得たものの一つは「親子の時間」でした。一昨年前の休校期間中、在宅勤務のかたわら、長女の自転車の練習に付き合いました。
幼稚園前はおもちゃみたいな自転車で、後ろに支えがあって押していてあげたのが、卒園の頃には補助輪付きの自転車になっていました。
「補助輪を外したい。」そんな娘の一言から、お父さんの苦悩は始まります。
(スパナがあれば外せるな。あれ?でも急に一人で乗れるわけないか。どうやって練習させるんだ?あ、ヘルメットも被らせないと。どこで練習しよう?家の前?車が来たらどうする?じゃあ公園か。あれ?うちの親、どうやって教えてくれたっけ?)
自転車の教本がないかと本屋に行き、ネットで探して、YouTubeで予習して…。
公園でサドルを支えながら走り回りました。こぐ力が弱くて、なかなか自転車が倒れる恐怖が取れません。「足に力入れて。」「目線は前。下を見なくていいの。」「こわくない。大丈夫。」ゆるい坂をくだったときに、彼女はタイヤ2本でも走り続ければ転ばないことを理解しました。そこからは早かった。私が手を放しても、自分の足でこぎ続けたのです。「できたー!」自信に満ちた最高の笑顔でした。私は額の汗をぬぐいました。
「教育は自転車の補助輪です。学校と家庭が手を取り合って進めましょう。」
むかしお世話になった校長先生の保護者会でのあいさつです。
補助輪があれば走っていけます。そして、いつかそれを外しても一人で走っていけるように、先生と親が左右の補助輪となって同じ方向を向いて支えていく。向きを間違えないようにハンドルを握ってあげて、倒れないように体を支えてあげて、声を掛け続け、励まし続け、ときには背中を押して、少しずつ手を放す時間を伸ばし、そっと気付かれないように歩を緩めます。反対側に回って「ここまでおいで」と呼んだら、どんどん距離を伸ばして、やがて自分で決めた目標に向かってこぎ出したら、その背中を見守ります。転んだらいつでも駆け寄る心づもりで、手を貸したい自分をぐっと抑えて。
ニコニコ自由に走り回る娘を見ながら、子供のころ、自分が自転車に乗れた日のことを思い出しました。どこまでも走っていく彼女の背中を見つめながら、私は私の後ろに、私を見守る父親が立っているのを感じました。虹の見える朝でした。
ご家族の皆様、ここまで本当にお疲れさまでした。補助輪の片側は中学校へと変わりますが、彼ら彼女達が、やがて目標に向かって走り出せるようになるまで、これからも成長を見守っていただけますようよろしくお願いいたします。
義務教育6年間、よく頑張りました。中学校までの下り坂は気持ちのいい風が吹いていますよ。大丈夫、きっと走り続けられる。足を止めるな。前を見ろ。みんな、卒業、おめでとう。

あれ?先生の卒業文集、タイトル変わってない?

さいきん、K-POPにハマってるらしいよ。
(すみません。タイトルを修正しました。)