平成30年度の卒業文集に書いた原稿です。どこかしらが先生方の参考になれば幸いです。
教員をしていると、毎年、卒業文集にA5サイズの原稿を頼まれます。学校によっては、担任や管理職はA4サイズのところもありますね。本校は学級担任でもA5サイズなので助かります。
文集原稿を依頼されるのは12月の冬休み前ですが、それが分かっているので考え始めるのは11月くらいからです。
何について書こうかな?、自分の経験や自然から、みんなに伝えたいことはなにかな?と考えています。通勤時間中に考えることが多いですね。
卒業文集原稿『風は吹いている』
『風は吹いている』
新婚旅行でフランスへ行った。
(地球は巨大だよ)なんて思っていたが、飛行機で半日で行けてしまって、(案外小さいのかも)なんて思い直したことがあった。
ちなみに東京→パリ間は12・5時間、パリ→東京間は12時間で、少し速くなる。
地球が自転しているから?いいや、この差は偏西風によるものだ。
風はどうして吹くのだろう。
地球は自転しているので、昼間の地表は太陽に照らされて暖まり、温度差を作り出す。
温度差は気圧の差となり、その差を埋めようと空気が動き出し、風が生じるのだ。
海はどうして波があるのだろう。
風も原因の一つである。地球のどこかでいつも風が吹いていて、海水を動かしている。
もう一つは月の引力だ。それで海水を引き上げて満潮になる。
地球は自転しているので反対側も遠心力で満潮になる。
その中間が干潮になり、その差で波が生じるのだ。
地球は巨大である。
空気も海水も重力によって大地に押し付けられている。
さらに地球は自転している。
動いている空気にも、動いている海水にも、それとは逆向きの摩擦力が生じている。
つまり風も止んでしまうし、波も収まってしまうはずだ。
地球が自転しているから動くのに、地球が自転しているから止まってしまう。
地球とは矛盾に満ちた星なのかもしれない。
動き出そうとする者がいると、それを止めようとする者が現れる。
平和の大切さを学んだ人類が、それでもまだ戦争を起こそうとする。
原発事故を経験した日本人が、それでもまだ原発を再稼働しようとする。
明日を夢見て、希望を語る者がいると、昨日を悔やみ、絶望を嘆く者がいる。
人間とは矛盾に満ちた生き物なのかもしれない。
しかし、地球の自転は止まらない。
宇宙がほぼ真空で、地球との間には摩擦が働かないからだ。
人類の歩みは止まらない。
人間の想像力がほぼ無限で、他者との間には摩擦が働かないからだ。
それならば、私たちはどうだろうか。あなたはどうだろうか。
求められるのは、想像力である。
戦争を求める者の心には何があるのか。
原発再稼働派の人たちの目的は何なのか。
もしかしたら方法論が違うだけで、希求する目的は同じなのかもしれない。
ならば、想像力というハンマーで、その間の壁を壊すことはできないだろうか。
溝を埋めることはできないだろうか。橋を作ることはできないだろうか。
風も波も、私たちを脅かす災害になる時もあれば、私たちを癒すやさしさにもなる。
言葉も刃も、私たちを傷つける時もあれば、私たちを笑顔にするときもある。
方法も目的も、私たちの想像力ひとつで、全然違った未来をもたらしてくれるはずだ。
向い風が吹いているのか、私たちが走り続けているのか。
足を止めてはならない。いつだって風は吹いているのだから。
卒業おめでとう。
文集「風は吹いている」を書くにあたって
タイトルはAKB48の「風は吹いている」から来ています。AKBには当たり外れがありますが、わたしにとってはこの曲は名曲だと思っています。
このタイトルで文集を書きたいと思っていたので、書けてよかったです。スッキリしました。また次のタイトルを考えようと思います。
しかし、なかの文章はあまり関係がないです。理科教員らしく、自然から学べることを意識しています。理科道徳というやつです。
自然のことのなかに、原発の話とかをさりげなく盛り込んでいます。生徒がどれだけ読んで、どれだけ考えてくれるかはわかりませんが、一人でも気がついて考えてくれたらいいなと思います。