2011年、平成23年度の卒業文集メッセージです。特別な年でしたね。
卒業文集はいつ誰が読んでもいいように書いていますが、そのときそのときのキーワードを込めることが多いです。
それって、このプルトニウムのことですか?
「瓦礫をつんで走るトラック」もそうですね。
卒業文集に読解力を求めてくるとは…。
そうやって、その時代のことを思い出したり、調べてみたり、周りに話したり、なにかのきっかけになることを期待して、さりげなく仕込んでいるつもりです。
平成23年度卒業文集メッセージ「夜明け前…」
「夜明け前…」
小さい頃は寝るのが嫌いだった。夜に何かするわけでもないのに時間がもったいないと思ったし、起きているのが「大人みたい」だった。ひとりで布団にもぐって、茶の間から聞こえるテレビと家族の笑い声が恨めしかった。
今でも夜眠るのは嫌いだ(でも昼寝は好き)。もちろん明日がつらいからと思うと寝ないわけにはいかないけれど、わざと早く寝て夜明け前に目を覚ましたりする。あたりは真っ暗で、周りは寝静まっていて「大人みたい」でうれしくなる。
夜明け前、皆が起きてしまわないようにそっとカーテンを開ける。
東に太陽が出てくる前から、空は紺色、藍色、群青、青、瑠璃色、空色へと無限とも思える青のカーテンを広げ、山肌は燃えるように赤くなったかと思うと瞬く間に空が白んでくる。山すそから斜めに、空に向かって光芒が伸びていき、朝もやが輝いて、場所によっては光の海になる。
そんな夜明け前の一瞬が好きだ。
自然の美しさは光の美しさ。空の青も、海の紺碧も、夕日も朝焼けも、日食や蜃気楼も、オーロラやダイヤモンドダストも、すべては光が見せてくれる地球の奇跡だ。地球は美しい。世界は美しい。日本は美しい。
夜明け前、何が見えるか少し期待しながらそっとカーテンを開ける。
朝刊を配って走る若者が見えたり、ウォーキングをする老夫婦が見えたり、瓦礫をつんで走るトラックが見えたりする。
今日という一日をスタートさせるために、みんなが気持ちよく過ごせるように、誰かが希望を持てるように、努力をしている人がいる。
朝には特別な思いがある。
人の美しさは努力の美しさ。勉強も、スポーツも、絵画や音楽も、仕事や学校も、ノーベル賞もパラリンピックも、すべては努力が見せてくれる人間の希望だ。努力は美しい。希望は美しい。人間は美しい。
この努力の積み重ねで、私たちはどこへ行くのだろう。この人類の歴史という努力は、何を未来へ運んでいるのだろう。あの太陽が地球に作り出したかったものは、化石燃料だろうか。プルトニウムだろうか。緑生い茂る大地だろうか。世界中に訪れる朝の希望だろうか。
太陽の光が地球に様々なものを作り出したように、あなたの努力は人生に様々な可能性を生むだろう。あなたの心から発せられる光をよく見てほしい。太陽が毎朝、空に向かって光芒を放つように、「みずから湧き出てくる意志」が指し示している希望に向かって努力してみよう。 辛いときは、カーテンをそっと開けてみてほしい。頑張ってください
「寝たら明日が来ちゃうじゃないか」っていう名言(迷言?)が好きです。
この文集とあのマンガを結びつけていいんですか?