食育としてGAP農産物を紹介し、SDGsへつなげていこう

総合学習担当として

SDGsを学ぶにあたって、さまざまなアプローチがあることを学びました。

今回は、これまで学校教育に浸透してきている「食育」をとっかかりにします。

GAP農産物を扱うことで、食育を深めるとともに、SDGsへの導入としていきます。

  

GAP農産物とは何か。

農産物の安全性を確保するためには、守らなくてはいけない法律がたくさんあります。また、環境保全や人権保護、労働者の安全確保など、配慮すべきことも数多くあります。

ルールが守られ、配慮すべき事項に対応した「よい農業のやり方(Good Agricultural Practice:GAP)」が実践されていることを第三者機関が審査します。

GAPが行っていると認められた場合に、GAP認証が与えられ、そこで生産されたものを「GAP認証農産物」といいます。

 

GAPの取り組みはどのようなものか。

GAP認証農産物を購入することで、SDGsの達成に貢献することができます。

GAPの取り組みには、つぎの6点があります。

  • 人権の尊重
  • 農場管理
  • 環境保全
  • 食品安全
  • 労働安全
  • 家畜衛生

これらに取り組むことで、人にも環境にも優しい持続可能な農業になります。

 

SDGsとのつながり

SDGsの目標にすると、つぎのような関連が考えられるでしょう。

人権の尊重

人種、国籍、性別などによる雇用や昇給、賃金差別をなくす。

SDG8「働きがいも経済成長も」

同一労働、同一賃金の達成を目指す。

農場管理

環境への負荷を軽減し、社会的ニーズに考慮した農産物を供給するような持続可能な農業を実践する。
役割分担を明確にし、働きがいのある職場環境をつくる。

SDG2「飢餓をゼロに」

化学肥料を使いすぎないように管理する

SDG4「質の高い教育をみんなに」

作業マニュアルを作成し、作業に関わる人がよりよい作業体制を構築するために、マニュアルの見直しを行う。

環境保全

農業生産に伴い発生する廃棄物の削減と再利用に取り組む。
農業生産が及ぼす生態系への影響を考慮し、生物多様性に配慮した活動に取り組む。

SDG12「つくる責任、つかう責任」

牧草や稲わらを農地にすき込んだり、堆肥を作ったり、廃棄物を減少させる。

SDG15「陸の豊かさも守ろう」

化学合成農薬の使用を減らし、生物農薬を活用する。

食品安全

使用する水、土、肥料、飼料、農薬、動物用医薬品などの安全を確認し、適切な管理を行う。

SDG12「つくる責任、つかう責任」

登録のある肥料を使用し、適切に管理する。

労働安全

作業者が安全に働ける労働環境をつくる。

SDG8「働きがいも経済成長も」

労働安全の研修を行う。熱中症対策のために、こまめな水分補給をルール化する。

家畜衛生

衛生的な飼育環境で家畜を健康的に育て、安全な畜産物を提供する。

SDG15「陸の豊かさも守ろう」

家畜を適切な飼育環境で育てる。

他にも関連するゴールはあるかと思います。

 

GAPからSDGsへつなげる

上記のような先生の知識をもとにして、GAP農産物を紹介するところから、SDGsへどのようにつなげていくか考えてみます。

(1)17の目標のどれに該当するか考えさせる。

先生は正解を知っているものとして、生徒に17の目標のどれに該当するか考えさせます。

6項目ありますので、班で話し合わせたり、個人で一つひとつ検討させてもいいでしょう。

小学校、中学校くらいなら、全体で答え合わせすると盛り上がると思います。

 

(2)169のターゲットのどれに該当するか考えさせる。

169のターゲットは難しいですが、どのゴールに該当するかまで分かれば、突き詰めやすくなります。

169のターゲットに目を向けさせる機会にもなると思います。

中学校、高校くらいなら、ターゲットのことも分かってくると思います。

  

(3)トレードオフになっていることはなにか。

GAPがすべて正しいというわけではないはずです。光があれば影もあります。

あえてそちらにも目を向けさせるようにしましょう。

そしてそのバランスを取る方法を考えさせます。

  

(4)SDGsウォッシュはないか、あるならどんなところか。

GAP認証された農場には、個人でやっているところもあれば、企業などで大規模に行っているところもあります。それらにSDGsウォッシュはないでしょうか。

SDGsウォッシュとは、SDGsを謳っていながら、実際にはその取り組みが伴っていないことです。

「GAP認証機関がチェックしているから大丈夫です。」と言ってしまわずに、もし、そのような可能性があるなら?という視点で想像させてみましょう。賢い消費者は賢い市民です。

 

(5)GAP農作物を通して、SDGsに貢献するには。

ここまで学習して、ではどうやってSDGsに貢献するか、生徒に考えさせます。

単純に「食べればいい」「買えばいい」の一言ではないはずです。小学校なら保護者に話す児童も出てくるでしょう。中学校、高校には、職場体験や企業訪問などの行事との関連もあります。

GAP農産物を取り扱っているスーパーやコンビニ、牛丼チェーン、飲料メーカーもあります。もしかしたら家の冷蔵庫にすでにあるかもしれません。

  

まとめ

ここまで、以前の記事に書いたSDGsを総合的な学習の時間に学ぶ5つのステップに沿って説明しました。

単に「SDGsについて調べましょう。」では、生徒に目的意識、学ぶ理由を説明できません。

総合的な学習の時間に大切な動機づけとして、これまで行われてきた食育を利用するのは取り掛かりやすいと思います。

かつて、エコ活動や3R運動は、子どもたちが学校で学んで大人たちへ広まっていきました。これと同じように、SDGsも学校教育が大きく影響するでしょう。

2030年という時間制限は意識しつつも、黙って手をこまねいているわけにはいかないのです。