学校でSDGsについて学ぶ機会が増えてきました。
17の目標を一つ一つ学ぶという段階はよくやります。
ただ、知識として学んで終わりでは意味がないので、行動・実践につなげていかなくてはいけません。
ここで、問題です。いえ、ここからが問題です。
はたして何をしたら、SDGsを学んだと言えるのでしょうか?
SDGsの学習の進め方
SDGsの学習について、5段階に分けてみました。1つの段階のなかでも学ぶことはいくつかありますので、数時間かかると思います。
もちろん、先生が調べてきたことを上意下達で教えて「はい、おしまい」というわけにはいきません。
先生が学んだあとにそれをどのように教材として生徒に提示するか、ゴールをイメージしながら、先生方で協議していきましょう。
第1段階 「17の目標を調べる」
まずは17の目標を一つ一つ読んでみるところから始まります。
あわせて、MDGsのことや、「5P」についても学ぶようにします。
第2段階 「169のターゲットを調べる」
SDGsの17の目標は、より具体的な169のターゲットをもっています。
すべてを覚えたり、理解したりするのは大人でも困難です。中学生、高校生ならば、169のターゲットがあるということを知っておくだけでも良いと思います。
もし目標の1つを掘り下げたいというときには、間違った方向にいかないように、ターゲットを拠り所にすることが大切です。

第3段階 「SDGsトレードオフについて理解する」
SDGsについて学んでいくと、目標どうしの対立に気づくようになります。勉強している証拠です。
ある目標を達成しようとすると、他の目標に対してマイナスの影響を及ぼすような関係性のことを「トレードオフ(trade-off)」と呼びます。
例えば、経済成長を目指す目標(SDG 8「働きがいも経済成長も」)が、環境への負荷を増大させる可能性がある(SDG 13「気候変動に具体的な対策を」)というトレードオフの関係があります。
トレードオフには以下のような例があります。
トレードオフの例
- 農業生産と水資源: 食料生産を増やすための農業拡大(SDG 2)が、水資源の過剰使用や汚染を引き起こし、清潔な水の確保を難しくすることがあります(SDG 6)。
- インフラ開発と生態系保護: インフラ整備や都市化の進展(SDG 9, 11)が、自然生態系の破壊や生物多様性の喪失を招くことがあります(SDG 14, 15)。
- ジェンダー平等と文化的伝統: ジェンダー平等を推進する取り組み(SDG 5)が、特定の地域やコミュニティでは、文化的伝統や慣習と衝突することがあります(SDG 10)。
このような場合、どちらも両立するための工夫や、新しい発想や価値観、イノベーションが求められます。

第4段階 「SDGsウォッシュについて理解する」
SDGsについて学んでいくと、先行するさまざまな取り組みをしている団体や企業についても調べるようになります。
そんなとき、SDGsウォッシュという考え方を知っておく必要がります。
SDGsウォッシュとは、企業が表向きにはSDGsへの取り組みをアピールしているものの、実際にはその内容が薄かったり、持続可能性に実質的な貢献がない場合を指す言葉です。
SDGsの認知度や関心の高さを利用して、企業イメージを良くしようとする行為ですが、実際の取り組みが伴っていないため、消費者や市民からの信頼を損なうリスクがあります。さらには、SDGsが持つ本来の目的や意義を損なう恐れさえあります。
この言葉は、企業が環境配慮をアピールする一方で実際には環境に悪影響を与えている「グリーンウォッシュ(greenwashing)」から派生したものです。
SDGsウォッシュの例としては、以下のようなケースがあります。
SDGsウォッシュの例
- 表面的な取り組み: 単なるキャンペーンや一時的なイベントでSDGsへの取り組みをアピールするが、長期的な持続可能性戦略が欠けている。
- 実質的な効果のない活動: 実際にはほとんど影響を与えない、あるいは効果が検証されていない取り組みをSDGsの達成に貢献しているように見せかける。
- 透明性の欠如: 取り組みの成果や進捗が公開されておらず、外部からの評価が難しい場合。
SDGsウォッシュを見抜く目をもった、賢い市民を育てるために必要なことです。
第5段階 「SDGsのつながりに貢献する」
ここまでを踏まえて、SDGsの17の目標を達成するための方法を考え、具体的な実践を導くようにします。
SDGsの目標はどれも地球規模の壮大なものですが、それを達成するためには私たち一人一人の小さな努力が必要です。
トレードオフを両立するための手がかりや、SDGsウォッシュを見抜く目は、賢い世界市民に求められる資質です。
SDGsを達成するための取り組みには「風が吹けば桶屋が儲かる」的な発想力が求められます。一見関係がなさそうな行動が他の目標に良い影響を及ぼしていくという発想です。
SDGsは17の目標が相互に関連し合っており、ある目標への取り組みがほかの目標達成に貢献する場合が多いです。
例えば、質の高い教育を提供すること(SDG 4)は、経済成長(SDG 8)やジェンダー平等(SDG 5)の促進に繋がり、さらに貧困の削減(SDG 1)や健康の改善(SDG 3)にも寄与します。
このように、1つの目標への取り組みが、連鎖的に他の目標にも良い影響を与えることがあります。

SDGsは総合的な学習の時間のテーマとしては最適
SDGsの学習は、総合的な学習の時間のテーマとして最適です。SDGsの特徴は、こうした多層的なつながりを意識しながら、包括的なアプローチをすることで、より大きなインパクトを生み出すことができる点にあります。
SDGsを勉強していくと、エネルギーや環境、国際情勢(歴史・地理)などさまざまな勉強が必要になります。各教科で学習したことを、総合的な学習の時間に活かしやすくなります。
SDGsの目標は、幅広くなりすぎて取り掛かりにくいとも言われます。反面、どのようなところから入ってもSDGsにつながっていくという良さもあります。
生徒が個人や学級・学校を大風呂敷を広げすぎてしまわないように、また、教師にとってもやりがいをもって取り組めるように、総合的な学習の時間担当として計画・運営しましょう。