中学校学習指導要領解説【理科編】第1分野(6)化学変化とイオンの解説

学習指導要領
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「中学校学習指導要領解説【理科編】(平成29年7月)」p58~の「(6)化学変化とイオン」についての解説です。

本文は中学校学習指導要領解説【理科編】のコピー&ペーストです。見出しや付箋、マーカーペンについては私が追記した部分ですので、ご注意ください。

先生方の研究授業やカリキュラムマネジメント、移行措置の確認などに生かしていただければ幸いです。

第1分野(6)化学変化とイオン

単元全体の枠組み

(6)化学変化とイオン

 化学変化についての観察,実験などを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 化学変化をイオンのモデルと関連付けながら,次のことを理解するとともに,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けること。

イ 化学変化について,見通しをもって観察,実験などを行い,イオンと関連付けてその結果を分析して解釈し,化学変化における規則性や関係性を見いだして表現すること。また,探究の過程を振り返ること。

既習事項

 小学校では,第6学年で「水溶液の性質」について学習している。また,中学校では,第1学年で「(2)身の回りの物質」,第2学年で「(3)電流とその利用」と「(4)化学変化と原子・分子」について学習している。

大項目のねらい

 ここでは,理科の見方・考え方を働かせて,水溶液の電気的な性質,酸とアルカリ,イオンへのなりやすさについての観察,実験などを行い,水溶液の電気伝導性,中和反応,電池の仕組みについて,イオンのモデルと関連付けて微視的に捉えさせて理解させ,それらの観察,実験などに関する技能を身に付けさせるとともに,思考力,判断力,表現力等を育成することが主なねらいである。

「思考・判断・表現」育成の考え方

 思考力,判断力,表現力等を育成するに当たっては,化学変化について見通しをもって観察,実験などを行い,イオンと関連付けてその結果を分析して解釈し,化学変化における規則性や関係性を見いだして表現するとともに,探究の過程を振り返らせることができるようにすることが大切である。その際,レポートの作成や発表を適宜行わせることも大切である。

特記事項・配慮事項

 また,ここで扱う事象は理科室の中だけで起こっているものではなく,日常生活や社会の中で見られることに気付かせ,物質や化学変化に対する興味・関心を高めるようにするとともに,これまで学んだことと関連付けながら身の回りの物質や事象を捉えることが大切である。
 なお,観察,実験に当たっては,保護眼鏡の着用などによる安全性の確保及び試薬や廃棄物の適切な取扱いに十分留意する。

(ア)水溶液とイオン
 ㋐ 原子の成り立ちとイオン
 水溶液に電圧をかけ電流を流す実験を行い,水溶液には電流が流れるものと流れないものとがあることを見いだして理解すること。また,電解質水溶液に電圧をかけ電流を流す実験を行い,電極に物質が生成することからイオンの存在を知るとともに,イオンの生成が原子の成り立ちに関係することを知ること。

 ㋑ 酸・アルカリ
 酸とアルカリの性質を調べる実験を行い,酸とアルカリのそれぞれの特性が水素イオンと水酸化物イオンによることを知ること。

 ㋒ 中和と塩
 中和反応の実験を行い,酸とアルカリを混ぜると水と塩が生成することを理解すること。

(内容の取扱い)

ア アの(ア)の㋐の「原子の成り立ち」については,原子が電子と原子核からできていることを扱うこと。その際,原子核が陽子と中性子でできていることや,同じ元素でも中性子の数が異なる原子があることにも触れること。また「イオン」については,化学式で表されることにも触れること。

イ アの(ア)の㋑については,pH にも触れること。

ウ アの(ア)の㋒については,水に溶ける塩と水に溶けない塩があること
にも触れること。

 ここでは,様々な水溶液に適切な電圧をかけ,水溶液の電気伝導性や電極に生成する物質を調べる観察,実験や酸とアルカリの性質を調べる観察,実験及び中和反応の観察,実験を行い,その結果を分析して解釈し,イオンの存在やその生成が原子の成り立ちに関係することを理解させるとともに,酸とアルカリの特性や中和反応をイオンのモデルと関連付けて理解させることが主なねらいである。

㋐ 原子の成り立ちとイオンについて
 「(4)化学変化と原子・分子」では,物質が原子や分子でできていることを学習している。また,「(3)電流とその利用」では,電流が電子の流れに関係していることを学習している。
 ここでは,水溶液の電気伝導性を調べる実験を行い,溶けている物質には電解質と非電解質があることを見いださせるとともに,電解質水溶液に適切な電圧をかけ電流を流す実験を行い,陽極と陰極でそれぞれ決まった物質が生成することに気付かせ,イオンの存在やその生成が原子の成り立ちに関係することを理解させることがねらいである。
 例えば,砂糖や食塩など身近な物質の水溶液や,うすい塩酸やうすい水酸化ナトリウム水溶液,塩化銅水溶液などに炭素電極を入れ,適切な電圧をかけ電流を流す実験を行い,水溶液には電流が流れるものと流れないものがあることを実験から見いださせ,水溶液に溶けていた物質を電解質と非電解質に分類できることを理解させる。また,現象を捉えやすい電解質水溶液として,うすい塩酸や塩化銅水溶液などに適切な電圧をかけ電流を流す実験を行い,陽極と陰極に決まった物質が生成することに着目させ,電解質の水溶液中に電気を帯びた粒子が存在することを理解させ,イオンの概念を形成させる。また,イオンの生成と関連して,原子は電子と原子核からできていることを扱う。その際,原子核は陽子と中性子からできていること,同じ元素でも中性子の数が異なる原子があることにも触れる。
 なお,イオンは化学式で表されることに触れる。

㋑ 酸・アルカリについて
 小学校では,第6学年で,水溶液には酸性,アルカリ性,中性のものがあること,金属を変化させる水溶液があることについて学習している。
 ここでは,酸とアルカリの水溶液の特性を調べる実験を行い,酸とアルカリそれぞれに共通する性質を見いださせるとともに,その性質が水素イオンと水酸化物イオンによることを理解させることがねらいである。
 例えば,「(ア)ア◯ 原子の成り立ちとイオン」と関連させながら,酸やアルカリの性質が何に関係しているかということについて見通しをもたせ,酸やアルカリの水溶液を中央部分に染み込ませたろ紙などに適切な電圧をかけ,指示薬の色の変化を観察することにより,酸やアルカリの性質とイオンとの関係を見いだして理解させる。また,酸性やアルカリ性の強さを表す指標として,pH を取り上げ,pH 7が中性であり,7より小さくなるほど酸性が強く,7より大きくなるほどアルカリ性が強いことに触れる。その際,日常生活における物質に対する興味・関心を高めるため,身の回りの物質の pH を測定するなどの実験を行うことが考えられる。

㋒ 中和と塩について
 ここでは,中和反応の実験を行い,中和反応によって水と塩が生成することをイオンのモデルと関連付けて理解させることがねらいである。
 例えば,うすい塩酸とうすい水酸化ナトリウム水溶液を中和させる実験を行い,中性になった液を蒸発乾固させると塩化ナトリウムの結晶が生じることを理解させる。塩酸と水酸化ナトリウム水溶液をイオンのモデルで表し,中和反応においては水素イオンと水酸化物イオンから水が生じることにより酸とアルカリがお互いの性質を打ち消し合うことや,塩化物イオンとナトリウムイオンから塩化ナトリウムという塩が生じることをイオンのモデルを用いて考察させ理解させる。その際,中性にならなくても中和反応は起きていることにも触れる。また,酸とアルカリの組合せにより,塩化ナトリウムのように水に溶ける塩のほか,硫酸バリウムのような水に溶けない塩が生じることにも触れる。
 日常生活や社会と関連した例としては,土壌の改良などに中和が利用されていることを取り上げることが考えられる。

(イ)化学変化と電池
 ㋐ 金属イオン
 金属を電解質水溶液に入れる実験を行い,金属によってイオンへのなりやすさが異なることを見いだして理解すること。

 ㋑ 化学変化と電池
 電解質水溶液と2種類の金属などを用いた実験を行い,電池の基本的な仕組みを理解するとともに,化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを知ること。

(内容の取扱い)

エ アの(イ)の㋐の「金属イオン」については,基礎的なものを扱うこと。
オ アの(イ)の㋑の「電池」については,電極で起こる反応をイオンのモデルと関連付けて扱うこと。その際,「電池の基本的な仕組み」については,ダニエル電池を取り上げること。また,日常生活や社会で利用されている代表的な電池にも触れること。

 ここでは,電解質水溶液と金属の化学変化の観察,実験を行い,その結果を分析して解釈し,金属の種類によってイオンへのなりやすさが異なること,電池においては,電極における電子の授受によって外部に電流を取り出していること,化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを理解させることが主なねらいである。

㋐ 金属イオンについて
 小学校では,第6学年で,金属を変化させる水溶液があることを学習している。
 ここでは,金属を電解質水溶液に入れる実験を行い,化学変化において電子の授受が行われていることや,金属の種類によってイオンへのなりやすさが異なることを,イオンのモデルと関連付けて理解させることがねらいである。
 金属を電解質水溶液中で反応させる実験を行い,イオンのモデルと関連付けて理解させるとともに,金属の種類に着目して問題を見いだすことが考えられる。
 例えば,金属を電解質水溶液に入れる実験を行い,金属が水溶液に溶けたり水溶液中の金属イオンが金属として出てきたりすることなどを見いだし,イオンのモデルと関連させて理解させることが考えられる。その上で,3種類程度の金属とその金属の塩の水溶液を用いてイオンへのなりやすさを比較する実験を計画し,見通しをもって観察,実験を行うことが考えられる。これまでの化学変化に関する学習の過程を踏まえて,イオンのモデルと関連付けて考えたり,得られた結果を表にまとめて分析したりして,金属のイオンへのなりやすさが異なることについて根拠を示して表現するとともに,探究の過程を振り返ることが考えられる。具体的には,考察が課題と対応しているか,根拠を基に結論を導いているか,他の物質ではどうなるかといった新たな問題を見いだしているかなどが考えられる。
 また「㋑ 化学変化と電池」の「電池の基本的な仕組み」の理解に必要な基礎的な金属イオンを扱うことに留意する。
 なお,生徒に実験を計画させる際には,事前に実験方法や安全性を確認することに留意する。

㋑ 化学変化と電池について
 「(3)電流とその利用」では,電流が電子の流れに関係していること,熱や光などが取り出せることを学習している。
 ここでは,電解質水溶液と2種類の金属などを用いて電池をつくる実験を行い,電極に接続した外部の回路に電流が流れることを見いださせるとともに,電極における変化にイオンが関係していること,電池においては化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを理解させることがねらいである。
 実用的な電池の例としてダニエル電池を取り上げ,例えば,その製作を行う。その際,硫酸亜鉛水溶液,硫酸銅水溶液,亜鉛板,銅板を用いて回路を形成すると,電圧が生じて電池になることを実験で確かめさせることなどが考えられる。また,金属のイオンへのなりやすさが異なることと電子の移動する向きを関連させながら,電池の電極における変化についてイオンのモデルを用いて表現させることを通して,電極で生じた電子が回路に電流として流れることを理解させる。
 日常生活や社会では,乾電池,鉛蓄電池,燃料電池など,様々な電池が使われていることに触れる。

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