メンタルヘルス研修を受けてみて、さまざまな用語が出てきましたので、それらを整理したいと思います。
メンタルヘルスは、体調を崩した職員を支援するためだけのものではありません。
職員一人一人が安心して働ける職場をつくり、不調を未然に防ぐことこそ管理職の大切な役割です。
法律や制度を正しく理解し、日頃から小さな変化に気付ける職場づくりを心掛けていきたいものです。
メンタルヘルス、メンタルヘルスケアとは
メンタルヘルスとは、「こころの健康」です。
世界保健機関(WHO)の定義
自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態
メンタル不調とは、ストレスなど様々な要因によって心身の不調が生じ、日常生活や仕事に支障を来している状態です。
セルフケア
労働者自らが実施するケアです。
- ストレスやメンタルへルスに対する正しい理解
- ストレスチェックなどを活用したストレスへの気づき・ストレス対処・自発的な相談など
ラインによるケア
管理監督者が実施します。
- ストレスチェック集団分析結果などを活用した職場環境等の把握と改善
- 個別の相談対応
- 職場復帰支援

アプリのLINEではなく、職場の指揮命令系統を意味しています。
事業場内産業スタッフによるケア
産業医・衛生管理者・衛生推進者・人事労務担当者が実施します。
- 産業医、衛生管理者等による職場環境等の改善
- 個別の相談対応・外部ネットワーク形成
事業場外資源によるケア
事業場外の機関・専門家が実施します。
- 事業場外の機関、専門家によるサービス(教育研修・相談窓口)の情報提供
これらのケアを生かして予防に努めます。
一次予防…不調を未然に防ぐ(研修・職場改善)
二次予防…早期発見・早期対応(相談・面談)
三次予防…職場復帰支援・再発防止
安全配慮義務
管理監督者は「事業者の安全配慮義務の履行補助者」です。つまり「知らなかった」では済まされない立場ということです。
労働者自身にも、自己保健義務といって、安全に働くために自分の健康を管理・維持に努める義務があります。
安全配慮義務の範囲は多岐にわたります。
労災事故、職業性疾患、過労死、過労自殺、メンタルヘルスだけではありません。
2025年にはパワハラとセクハラへの対策、2026年10月にはカスハラへの対策、求職者へのセクハラ対策なども入ってきます。
安全配慮義務は、健康配慮義務と職場環境配慮義務に分けることができます。
健康配慮義務
過重労働によるメンタル不調を防ぎための対策をするなど、労働者の心身に支障がでないよう配慮する義務です。
職場環境配慮義務
ハラスメント問題が起こらない環境づくりをするなど、労働者が快適に働けるよう職場環境に配慮する義務です。
〇労働契約法5条(平成19年)「安全配慮義務」
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
「生命、身体等」には「心身の健康」も含まれる。
安全配慮義務違反について問われた場合、「予見可能性」と「結果回避可能性」が判断材料になります。
予見可能性
「危険なことになると事前に察知できたか」
勤怠時間管理簿、健康診断の結果、先生方からの相談など。
結果回避可能性
「危険なことを防ぐための措置を取ることができたか」
業務量の調整、校務分掌の調整、通院の声掛け、産業医との面談設定など。
安全衛生委員会
安全衛生委員会は安全委員会、衛生委員会をあわせた呼び方です。労働者の健康障害を防止し、健康の保持増進を図るために設置される組織です。
労働安全衛生法では、一定規模(50人)以上の事業場に設置が義務付けられています。
事業場の捉え方が教育委員会によって違うので、学校(教育委員会)によって呼び方が違うと思います。
安全衛生委員会では、次のような内容について調査・審議します。
- 労働者の健康障害防止対策
- 健康の保持増進に関する対策
- 労働災害の原因及び再発防止対策
- 長時間労働対策
- メンタルヘルス対策
- 職場環境の改善
学校においても、安全衛生委員会を活用することで、個人の問題としてだけではなく、職場全体の課題として教職員の健康を考えることができます。
安全衛生委員会は、問題が起きた後に対応する場ではなく、問題が起きない職場をつくるための場です。
ストレスチェック制度
労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者がいる事業場では毎年1回実施が義務付けられている制度です。
結果は本人にだけ届きます。管理職といえど、本人の許可がないと結果を見ることができません。
ストレスの高い先生は、医師による面接指導を申し出ることができます。
教職員のメンタルヘルスの現状について
過労死等の労災認定事案の特徴から、次のようなことが見えてきました。
教育・学習支援業における過労死等の労災認定事案の特徴
脳・心臓疾患
全業種と比較して長時間労働の割合が大きい。
精神疾患等
上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きい。
公立小中学校教員の過労死等の公務災害認定事案の特徴
脳・心臓疾患
全件数が長時間労働に該当します。負荷業務をみると中学校における「部活動顧問」の業務が最も多かったそうです。
精神疾患等
心理的な負荷として、小学校の保護者からの𠮟責や暴行によるものを含む「住民等の公務上での関係」が最も多かったそうです。
まとめ(経験談)
私は、出産を控えた先生が短時間勤務を申し出た際、関連する法律や制度を一生懸命に確認し、無理なく勤務を続けられるよう勤務体制を整えた経験があります。
管理職が法律や制度を正しく理解していることは、先生方の安心につながります。また、制度を利用する本人だけでなく、周囲の先生方にも目的を丁寧に説明することで、納得して支え合える職場づくりにつながります。
その先生には、
「この制度を利用して、これから続く先生方が安心して働けるように、ママ先生のパイオニアになってください。」
と伝えました。
制度は、利用する人だけのためにあるものではありません。誰もが安心して働き続けられる学校をつくるために、管理職が正しく理解し、活用していくことが大切です。


