前回、「人事評価で気をつけたい12の認知バイアス・評価誤差」を書きました。
では、教頭という立場から考えたとき、何に気をつければよいのでしょうか。
大切にしていきたいと思う3つのポイントを挙げてみます。
人事評価で大切にしたい3つの「考え方」
評価者の姿勢として、大切にしたい3つの考え方を示します。
「印象」ではなく「事実」で見る
私が人事評価で一番大切だと思っているのは、「印象ではなく事実を書く」ということです。例えば、
×「責任感がある」
○「年間計画を前倒しで作成し、学年会で共有した。」
×「保護者対応が上手」
○「苦情対応後、翌日に保護者へフォローの電話を入れ、学年内でも情報共有を行った。」
この違いです。「責任感がある」「保護者対応が上手」というのは、評価者の印象です。一方、具体的な行動事実には、他の人が確認できる根拠があります。
廊下での先生と生徒のやりとり、部活動での様子、お茶コーナーでの雑談。評価するために先生方を見守るのではないのですが、生徒を見守るように先生方のことも見守ります。
目立たない先生もいます。係の仕事や校務分掌で目立たないからこそ、振り返って評価につながる事実がないか探すのです。
もちろん、一つの事実だけですべてを判断するわけではありません。複数の具体的な事実を積み重ね、それを評価項目に照らして判断します。その積み重ねが、納得感のある評価につながります。
日頃から具体的な行動事実をメモしておく。
自分の評価にも「偏りがある」と自覚する
人事評価は、先生方を評価するための制度です。しかし、評価する側にも、自分自身の「評価する力」が問われています。
評価者も人間です。だから、完全に公平な評価をすることは難しい。
大切なのは、「自分は公平に評価できている」と思い込むことではなく、「自分の評価にも偏りが入り得る」と自覚することではないでしょうか。
そしてそのために、公平であろうと努力し続けること。
具体的な事実を集め、評価基準に照らし、思い込みや印象に流されていないかを振り返る。
そうした積み重ねが、先生方から信頼される評価者への第一歩なのだと思います。
前回の記事を参考にしたり、「評価者のための30秒セルフチェック」を活用したりしてみてください。
③ 評価を「査定」ではなく「成長につなげる」
評価される側にとっても、人事評価は自分自身の仕事を振り返る機会になります。
「今年、自分は何をしてきたのか」
「何ができるようになったのか」
「次に何を目指すのか」
評価する側も、される側も、単なる「査定」のためではなく、よりよい仕事につなげるための振り返りの機会として人事評価を捉えることができれば、少し違った制度に見えてくるのではないでしょうか。
個人として、組織として、自分がどこを伸ばしていけばいいのか、業績や能力の事実を元にして、先生方へヒント、指導・助言が出せるようになりたいものです。
この先生になんてアドバイスしたらもっと伸びるかな?
この先生にあの研修へ行ってもらったら、多くの学びがあるんじゃないか?
この先生とあの先生がチームになってもらえたら、もっとよくなるんじゃないかな?
そんな風に先生方を伸ばす視点で、先生方を見ていくといいと思います。
人事評価で大切にしたい3つの「行動」
教頭は、校長先生以上に職員室にいる時間が長く、先生方の日常の様子を見る機会が多い立場です。
そこで、気をつけたい行動が3つあります。
① 職員室から出る
教頭は職員室にいることが多い仕事です。
先生方からの相談を受けたり、電話対応をしたり、書類を確認したり、さまざまな仕事があります。
しかし、職員室にいる時間が長いからこそ、「職員室で見える先生の姿」に評価が偏ってしまう危険があります。
職員室でよく話す先生。頻繁に相談に来る先生。積極的に発言する先生。そうした先生は、自然と目に入ります。
一方で、教室で黙々と授業をしている先生の姿は、職員室にいても見えません。
だからこそ、意識して職員室を出る。
授業を見に行く。集会や行事を見に行く。休み時間の生徒との関わりを見る。
先生方が実際に教育活動をしている場所へ、自分から足を運ぶ。
「職員室にいる先生」ではなく、「学校で働いている先生」を見る。
これは、教頭として意識しておきたいことです。
② 目立たない先生にも目を向ける
学校には、目立つ先生だけがいるわけではありません。
積極的に発言する先生。新しいことをどんどん提案する先生。周囲とのコミュニケーションが多い先生。こうした先生は、どうしても管理職の目に入りやすくなります。
一方で、授業を丁寧に準備している。生徒の小さな変化をよく見ている。学年の仕事を黙々と支えている。困っている同僚をさりげなく助けている。そんな先生もいます。
こうした仕事は、必ずしも目立つとは限りません。
しかし、学校は、そうした「目立たないけれど大切な仕事」によって支えられています。
教頭としては、「この先生は、普段あまり目立たないけれど、何をしているだろう?」と意識して見ることが大切だと思います。
評価のために「目立つ行動」を探すのではありません。
目立たないところにある価値ある行動を見つける。
それも、教頭の大切な役割ではないでしょうか。
③ 校長先生が気づかないところに気づく
校長先生と教頭では、学校の見え方が違います。
校長先生には校長先生の視点があります。教頭には教頭の視点があります。立場も違えば、学校を見る場所や時間も違います。
だから、教頭が校長先生と同じものを見ている必要はありません。
むしろ、「校長先生には見えていない先生の姿を見つける」ことが、教頭の大切な役割の一つだと思います。
例えば、「この先生は、実はこんなところで頑張っています。」「この先生は目立ちませんが、生徒からとても信頼されています。」「最近、この先生がこんな工夫を始めました。」
そんな情報を、校長先生と共有する。
それによって、管理職として学校の先生方をより立体的に見ることができます。もちろん、これは校長先生の評価を補正するという意味ではありません。
一人の管理職だけでは見えないものを、もう一人の管理職が見つける。
その積み重ねが、より公平で納得感のある人事評価につながるのだと思います。
「評価するために見る」のではなく、「知るために見る」
結局のところ、教頭にとって大切なのは、評価の時期になって突然先生方を観察することではないと思います。
- 普段から職員室を出て、先生方の仕事を見る。
- 目立たない先生にも目を向ける。
- 自分だからこそ気づける先生の姿を見つける。
そうして集めた具体的な行動事実を、必要なときに評価基準に照らして考える。
私は、その方がずっと公平な評価になると思っています。
人事評価のために先生を見るのではなく、先生方の仕事やがんばりを知るために見る。
その結果として、評価の根拠となる事実が積み重なっていく。
それが、教頭として私が大切にしたい人事評価の在り方です。



