スティグマを負わせる「いじめアンケート」を作らないように

 生徒指導担当として

スティグマという言葉を聞いたことがありましたが、教職員共済だよりに載っていた記事を元に、改めて考えてみたので記事にします。

生徒指導をするうえで、良かれと思ってやっていることが、実は生徒を苦しめることにもなりかねないと、自戒のためにも覚えておこうと思います。

みなさんはスティグマという言葉はご存知ですか?読んでいただけると幸いです。

   

スティグマ(stigma)とは何か

スティグマ(stigma)という言葉があります。

スティグマは個人に対して周囲が否定的な意味づけ(レッテル貼り)を行い、不当な差別や偏見、不利益を与えること、または、その烙印が固定化した状態を指します。

   

精神疾患やHIV患者、LGBTQなどの特定の属性や病気、障害などを持つ人に対して使われることがあります。それによって、何かのサービスが受けられないとか、周りから差別されるとかの扱いを受けます。(構造的スティグマ)

うつ病の人に対して「甘えだ」と言ったり、糖尿病や感染症などの人に対して「自己責任」「不摂生」と決めつけたりして、レッテルを貼ることを見聞きしたこともあると思います。(公的スティグマ)

自分で自分をレッテル貼りをして、落ち込んだり、人と会わなくなるといった行動をすることもあります。(自己スティグマ)

  

スティグマの問題はそれ自体にもありますが、さらに、本人が周囲の目を気にして必要な医療(受診)や支援を隠したり、遅らせたりする原因となり、孤立や症状の重症化を招く大きな障壁となることもあります。

このスティグマが、学校のいじめアンケートにもあるのではないか、というのが今回の記事でした。

内容をかいつまんで確認してみます。

   

いじめアンケートが「いじめ」にならないように  

いじめ防止対策推進法の施行により、多くの学校で学期に1回以上の「いじめアンケート」が行われていると思います。毎月やっているという学校を聞いたこともあります。

そのいじめアンケートの取り方で、「あなたは過去にいじめを受けたことがありますか?」と聞くことに慎重になったほうがいいのではないか、ということです。

なぜなら、「いじめ」という言葉自体がいじめになってしまいかねないからです。

   

「いじめ」は社会的に望ましくないものであると同時に、「みじめな」「無力な」といったスティグマを被害者に負わせるものです。

子どもにもプライドがあり、「自分はいじめられている」ということを認めるのは大変な苦痛です。

みなさんはそこが理解できますか?これは数字にも表れています。

   

いじめられた経験があるのに誰にも相談しなかった児童・生徒のうち、誰にも相談しなかった理由の上位を見てみます。

1位「被害が悪化するから」(75.4%)
2位「誰かに言ってもいじめは解決しないから」(54.3%)
3位「周りの人から普通に接してもらいたかったから」(47.2%)
4位「恥ずかしいから」(42.4%)

という結果が出ています。3位と4位に注目してください。いじめられた子ども達は周りに普通にしてほしいと考え、いじめられているのは恥ずかしいと感じているのです。

「いじめを受けた」と他人に対して認めること、あるいは、自分の心の内でそれを認めることは、子どものプライドを傷つけるものなのです。

  

「いじめ」という名詞を使うよりも、叩かれた、悪口を言われた等の具体的な行動・経験を尋ねたほうが、加害・被害ともに報告される率は高くなります。

ただし、具体的な行動を尋ねると、「いじめ」に該当しないような「ちょっかい」や「ふざけ」もカウントされるので、その後の聞き取りや対応が増えます。

小学校低学年の子ども達には、どういう行為が「いじめ」になるのか分からなかったり、「いじめ」という言葉・概念が理解できないこともあり得ると思います。

  

いじめアンケートの文言を検討する

言葉選びは、学校ごとに、発達段階ごとに、検討していってほしいと思います。その際に、今回の「スティグマ」のことが先生方の共通理解のベースの一つとしてあるといいなと思います。

アンケートのやり方も学校によってさまざまです。記名式・無記名式、選択式・記述式など組み合わせることもあると思います。学校で書かせる場合もあれば、持ち帰ってやらせる学校もあります。紙で実施することが多いと思いますが、今だとタブレットで回答させる学校もあります。

卒業までは厳重に管理して、何かあったときにすぐに再確認できるようにしておきましょう。もし、後からいじめが判明したときに「何年生の何月のアンケートでは何も書かれていなかった」という「書かれていない」ことが意味を持つときもあります。

最後に、アンケート作成の留意点を掲載しておきます。アンケートを作られる生徒指導主事や教育相談コーディネーターの参考になれば幸いです。

アンケートの留意点

1 アンケートの「使い道」をまず決めてからそれにふさわしい内容や尋ね方を選択する。

2 現況把握のためには年に数回、同じ項目のアンケートを継続的に実施する。

3 特に必要がない場合、アンケートは匿名で実施し、また匿名であることを回答者(児童生徒)に対して事前に説明する。

4 「いじめ」という名詞を使うかどうか、使った場合・使わない場合の影響等を検討する。

5 集計・分析がしやすい選択式と、詳細な情報が得やすい自由記述式を使い分ける。

  

参考 教職員共済だより 2026夏 vol.199 p6 「いじめについてのアンケートの方法②~目的に応じた設問づくりとアンケート実施のポイント~」

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