教頭になると、「先生方の様子をよく見てください」と言われます。
しかし、何を見れば「危険なサイン」なのでしょうか。
今回のメンタルヘルス研修では、そのヒントになる考え方を学びました。
自分で調べたことなども加えて記事にしてみました。
事例性と疾病性を2つに分けて整理する
大事なのは事が起きる前に察知することです。そこで、予見可能性をさらに「事例性」と「疾病性」に分けてみます。
疾病性(Disease)
個人の内面的な症状に焦点
- 医学的な病気の有無や病気の種類
- うつ病、適応障害、不安障害など
- 投薬治療等による自己管理
事例性(Case)
周囲が観察できる客観的な事実に焦点
- 職場で生じている具体的な問題や業務への支障
- 遅刻・欠勤の増加、業務パフォーマンスの低下
- 同僚とのトラブル、安全上の問題行動
疾病性は管理職でも個人に踏み込まないと見えてきません。
管理職が診断をする必要はありません。医師の役割ではないからです。
しかし、職場で起きている事実には誰でも気付くことができます。
そこで事例性に注目することで、職員のメンタルヘルスを守ることにつながります。
事例性の主な具体例
勤怠に関する具体例
- 遅刻、早退、欠勤、無断欠勤が増える
- 勤務中に居眠りをする、または離席が目立つ
- 連絡なしで休むことが続く
業務パフォーマンスに関する具体例
- 仕事のミスが急に増える、または作業の能率が落ちる
- 書類の提出期限や約束の時間を守れなくなる
- 指示された内容を理解できず、仕事が進まない
対人・行動に関する具体例
- 周囲とのコミュニケーションがうまく取れなくなる
- 感情の起伏が激しくなり、同僚とトラブルになる
- 身だしなみが乱れ、普段と違う行動が目立つ
「ケチな飲み屋」サイン(事例性)
事例性のまとめとして「けちなのみや」サインというのがあります。
「け」欠勤
「ち」遅刻・早退
「な」泣き言を言う・すぐに涙ぐむ(出勤のつらさ)
「の」能率の低下・集中力の低下(勤務・運転など)
「み」ミスの増加
「や」辞めたいと言い出す
これに加えて、
笑顔がない、表情の硬さ(挨拶などの返答)
周囲との折り合いの悪さ・過敏さ(会議、生徒指導での様子)
なども、教頭先生が職員室での観察で気付けるところだと思います。
「3つのい」サイン(疾病性)
疾病性を見抜くのは難しいですが、「3つのい」というのがあります。
〇ねむれな「い」
〇たべられな「い」
〇だる「い」
先生方がこのようなことを話していたら、もしくは様子が見られたら、ちょっと確認(声掛け)が必要かもしれません。
「最近眠そうに見えるけど、生活はどうなの?」
「あれ?給食残してますね、食べれてないんですか?」
「だるそうだなー?どっか調子悪いんじゃない?年休使っていいんだよ。」
日頃の観察を大切にしつつ、学年主任や保健室、事務室などにも先生方の様子を聞きに情報を集めることが大事です。
わたしもかつて学年主任が気付いてくれて、管理職から声を掛けてもらったことがあります。
自分の不調を見ていてくれる人がいるんだと思えただけでも、ありがたかったです。
ライフイベントのストレス得点表
先生方のライフイベントからリスクを見積もることができます。ライフイベントのストレス得点表と言います。
結婚と妊娠、生活リズムの変化、仕事の責任変化などライフイベントは立て続けに変化したり、同時に起きたりします。
外国で作られたものなので、100万円ではなく1万ドルだったり、クリスマスだけが取り上げられていたりしますが、ひとつの指標として使えると思います。
心配な先生に当てはめてみて(あの先生、実はまずいかも)と気付いたり、自分のこれまでを振り返ってみて(あのときヤバかったんだな)と自省してみてもいいと思います。
| 得点 | ライフイベント | 得点 | ライフイベント | 得点 | ライフイベント |
| 100 | 配偶者の死 | 38 | 家計の悪化 | 23 | 上司とトラブル |
| 73 | 離婚 | 37 | 友人の死 | 20 | 労働環境変化 |
| 65 | 別居 | 36 | 転職 | 20 | 転居 |
| 63 | 懲役 | 35 | 夫婦喧嘩増加 | 20 | 転校 |
| 63 | 近親者の死 | 31 | 100万円以上の借金 | 19 | 趣味の変化 |
| 53 | けがや病気 | 30 | 預金等の消滅 | 19 | 宗教の変化 |
| 50 | 結婚 | 29 | 仕事の責任変化 | 18 | 社会活動変化 |
| 47 | 失業 | 29 | 子どもの独立 | 17 | 100万円以下の借金 |
| 45 | 離婚調停 | 29 | 親戚とトラブル | 16 | 睡眠リズム変化 |
| 44 | 家族の病気・けが | 28 | 個人的成功 | 15 | 同居人の変化 |
| 40 | 妊娠 | 26 | 配偶者の就職退職 | 15 | 食習慣の変化 |
| 39 | 性的困難 | 26 | 入学・卒業 | 13 | 長期休暇 |
| 39 | 家族の増加 | 25 | 生活リズム変化 | 12 | クリスマス |
| 39 | 新しい仕事 | 24 | 習慣の変更 | 11 | 軽微な法律違反 |
あてはまるものを合計すると、心身の不調が生じるリスクの目安になります。あくまで統計的な指標であり、個人の状態を判断するものではありません。
150未満 → リスク:30%
150~300 → リスク:50%
300超過 → リスク:80%
まとめ
管理職にできることは、病気を診断することではありません。
しかし、普段との違いに気付き、「最近どうですか」と声を掛けることはできます。
「ケチな飲み屋」や「3つのい」は、その最初の一歩となるサインです。
一人で抱え込ませない職場づくりこそが、先生方のメンタルヘルスを守る第一歩なのだと思います。



