「合理的配慮」の3観点11項目とは?

「合理的配慮」は、2006年12月13日の国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約」が全会一致で採択されたことから始まっています。

この条約は、障害者への差別禁止や障害者の尊厳と権利を保障することを義務付けた「国際人権法」に基づく人権条約です。

日本は2007年に署名し、2016年に「障害者差別解消法」が施行された当初から義務化されています。さらに、2021年の法改正により、2024年4月1日から民間事業者による「合理的配慮の提供」が義務化されました。

今回は特別支援教育や通常学級における支援でたびたび出てくる「合理的配慮」について記事にします。

  

「合理的配慮」とは

合理的配慮(Reasonable Accommodation)は直訳で「筋の通った調整」という意味になります。つまり、その人が抱える困難を解消するために行う調整であり、「特別扱い」ではないと言えます。

障害のある人の権利を保障するために、人・物・ことにおいて負担が重すぎない範囲で調整することは、ひいきや差別、特別扱いではないでしょう。

管理職のリーダーシップのもと、特別支援コーディネーターが中心となって、合理的配慮が実効性のあるものとして日常指導できるよう、全教職員に理解と実践を促しましょう。

全教職員が取り組むことで、特別支援学級の子どもたちだけでなく、通常の子どもたちにとっても価値があり、誰もが安心して生活できる学校づくりを進めることができます。

教育で提供された「合理的配慮」は、本人が社会、地域で生きていくための、必要な配慮にもつながっていきます。だからこそ、「個別の教育支援計画」への明記が大切になります。

  

3観点11項目とは

合理的配慮の観点として、文部科学省は3観点11項目を示しています。

「合理的配慮」の観点の部分について、上の資料から転記しておきます。

(1)教育内容・方法、(2)支援体制、(3)環境・設備の3観点がさらに11項目に分かれています。

  1. (1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
  2. (1)-1-2 学習内容の変更・調整
  3. (1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮
  4. (1)-2-2 学習機会や体験の確保
  5. (1)-2-3 心理面・健康面の配慮
  6. (2)-1 専門性のある指導体制の整備
  7. (2)-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
  8. (2)-3 災害時等の支援体制の整備
  9. (3)-1 校内環境のバリアフリー化
  10. (3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
  11. (3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮

観点(1)教育内容・方法

(1)-1 教育内容

(1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮

障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため、また、個性や障害の特性に応じて、その持てる力を高めるため、必要な知識、技能、態度、習慣を身に付けられるよう支援する。

(1)-1-2 学習内容の変更・調整

認知の特性、身体の動き等に応じて、具体の学習活動の内容や量、評価の方法等を工夫する。障害の状態、発達の段階、年齢等を考慮しつつ、卒業後の生活や進路を見据えた学習内容を考慮するとともに、学習過程において人間関係を広げることや自己選択・自己判断の機会を増やすこと等に留意する。

【具体的にどんな配慮をするか?】
障がいの困難さに対して、どういった配慮があると十分に学習等を受けることができるのか考え
たり、学習内容について考えたりすることです。

LD のある児童生徒の例では、読み書きや計算等に関して、別の方法で代替えするなどの検討が考えられます。また、「読む」「書く」等の特定の学習内容の習得が難しいので、基礎的な内容の習得を確実にすることを重視した学習内容の変更・調整などが考えられます。

(1)-2 教育方法

(1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮

障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮するとともに、教材(ICT及び補助用具を含む)の活用について配慮する。

(1)-2-2 学習機会や体験の確保

治療のため学習空白が生じることや障害の状態により経験が不足することに対し、学習機会や体験を確保する方法を工夫する。また、感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて概念形成を促進する。さらに、入学試験やその他の試験において配慮する。

(1)-2-3 心理面・健康面の配慮

適切な人間関係を構築するため、集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに、他の幼児児童生徒が障害について理解を深めることができるようにする。学習に見通しが持てるようにしたり、周囲の状況を判断できるようにしたりして心理的不安を取り除く。また、健康状態により、学習内容・方法を柔軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消し自己肯定感を高める。
学習の予定や進め方を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認できるようにすることで、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。

【具体的にどんな配慮をするか?】
障がいの困難さに対して、どういった配慮があると、情報が伝わりやすいのか、教材が扱いやすいのかなどを考えていきます。また、障がい特性から、学習機会をどう設定するのか、心理面等に対して、どのような配慮が必要かを考えます。

自閉症のある児童生徒の例では、視覚を活用した情報提供、手先の不器用さなどに対して、教材の補助具の活用も考えられます。学習機会に関しては、行動の意味を理解するために体験的な活動を設定することも検討されます。心理面では、子どもの状態に応じた指導を行いながら、情緒不安や自尊感情低下等への対応も検討されます。

観点(2) 支援体制

(2)-1 専門性のある指導体制の整備

校長がリーダーシップを発揮し、学校全体として専門性のある指導体制を確保することに努める。そのため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成するなどにより、学校内外の関係者の共通理解を図るとともに、役割分担を行う。また、学習の場面等を考慮した校内の役割分担を行う。

必要に応じ、適切な人的配置(支援員等)を行うほか、学校内外の教育資源(通級による指導や特別支援学級、特別支援学校のセンター的機能、専門家チーム等による助言等)の活用や医療、福祉、労働等関係機関との連携を行う。

(2)-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮

障害のある幼児児童生徒に関して、障害によって日常生活や学習場面において様々な困難が生じることについて周囲の幼児児童生徒の理解啓発を図る。共生の理念を涵養するため、障害のある幼児児童生徒の集団参加の方法について、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒自身が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。また、保護者、地域に対しても理解啓発を図るための活動を行う。

(2)-3 災害時等の支援体制の整備

災害時等の対応について、障害のある幼児児童生徒の状態を考慮し、危機の予測、避
難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、災害時等にお
ける対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一人一人の障害の状態
等を考慮する。

【具体的にどんな配慮をするか?】
障がいの困難さに対して、どういった指導体制が必要か、周囲への理解啓発はどうしたらよいか、災害時の支援体制の整備について確認をすることになります。

ADHD のある児童生徒の例では、特別支援学校や発達障害者支援センターなどの外部専門家からの助言や特別支援教育コーディネーターとの連携、通級による指導等の学校内の資源の有効活用の検討が考えられます。

また、不適切と受け止められやすい行動への周囲への説明や危険な行動等の安全な制止、防止の方策等について検討したりします。さらに、災害時に、指示の途中で動いたりする、落ち着きを失ったりする傾向を踏まえた支援体制等を検討することが考えられます。

観点(3) 施設・設備

(3)-1 校内環境のバリアフリー化

障害のある幼児児童生徒が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、便所、出入口、エレベーター等について施設の整備を計画する際に配慮する。また、既存の学校施設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進できるよう配慮する。

(3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮

幼児児童生徒一人一人が障害の状態等に応じ、十分に学習に取り組めるよう、必要に応じて様々な教育機器等の導入や施設の整備を行う。また、一人一人の障害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、分かりやすさ等に配慮を行うとともに、日照、室温、音の影響等に配慮する。さらに、心のケアを必要とする幼児児童生徒への配慮を行う。

(3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮

災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。

【具体的にどんなこと?】
障がいの困難さに対して、どういった環境への配慮が必要かを検討することになります。
知的障がいのある児童生徒の例では、自主的な移動ができるように、導線や目的の場所が視覚的
に理解できるようにするなどの校内環境の検討も考えられます。また危険を予知できないことによる高所からの落下やけが等がないように安全性への配慮が必要になってきます。さらに、災害時においても、行動の仕方が分かるような簡潔な導線、分かりやすい設備の配置などの検討が考えられます。

  

具体的にどんなことをしたらいいのか?

特別支援学級で考えると、知的障がい学級と自閉症・情緒障がい学級が多いと思います。

通常学級には、知的障がいの生徒、自閉症・情緒障がいの生徒が在籍していてもおかしくありません。学習障害や注意欠陥多動性障害の生徒もいます。

我々は医者ではないので勝手に診断名で語るのは好きではありませんが、疑われる生徒、グレーゾーンの生徒という捉え方・言い方をすればよいと思います。

何かしらの困り感があれば、何かしらの手立てを立てていきたいものです。

それぞれの障がいに応じて、具体的にどんなことをしたらいいのか、日常的な会話に加えて、ケース会議や就学支援委員会(学校によって名称はいろいろです)などで先生方と話し合ってみましょう。

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