冬の練習で自分たちを甘やかさない選手にするために話したこと

 部活動顧問として

今年は暖冬でしょうか、例年ほど雪が降りませんね。それでも外は寒いです。野球部の生徒たちはがんばっています。私もできる限り、練習を見守っています。

主題「自分で積み上げた壁を、自分で乗り越える」

練習の終わりには話をしなくてはいけません。寒いなかでも汗はかいていますから体は冷える一方です。先生の長い話をダラダラと聞かせたくはありません。このようなときは、自分のなかで話すことをきっちりと決めています。

主題となるメッセージは「冬の練習で生徒たちが自分を甘やかさないために、自分で積み上げた壁を自分で乗り越えてほしい」ということです。それを主軸に話を組み立てて、 起承転結で次のように話しました。

起「練習メニューは自分たちで決めた」

「このあいだ、キャプテン、副キャプテンを中心に、自分たちで冬の練習メニューを決めたね。

今はそれに従ってやっている。君たちならできると思ったから、練習メニューを立てさせているんだけど、ちょっと駄目なところがある。

メニューをその場で決めては駄目なんだ。そうすると、都合の悪いメニューを避けるようになる。辛い練習をしなくなる。

勉強でもそうでしょ?その場の思いつきで勉強していると、『よし、漢字練習しよう。次は単語の練習しよう。計算問題は面倒だからまた今度でいいや。』ってなるよね。結果、面倒な勉強には手を付けないで試験になってしまう。

だからね、練習メニューは楽しいことと苦しいことと、バランス良く組み合わせてやるんだよ。その場の思いつきではなく、練習の始めに『今日はこれとこれとこれをやります』って決めてからやるの。わかった?」

承「チームだと妥協しない」

「これはチームにも言えるし、個人にも言えることなんだよ。

『このぐらいでいいや』『仕方ないよ』『もういいでしょ』では、都合のいい練習でしかない。それでは上達しない。

自分たちの思い通りにならない、都合よくいかない。それが試合だよね。

(ど真ん中に投げてくれないかな~。)(空振りしてくれないかな~。)(タッチアウトになってくれないかな~。)そう思っても、いやいや、そんな都合のいいこと起きない。秋までの試合でさんざん味わってきたよね。

都合が悪くても我慢する。辛くても乗り越える。苦しみと向き合う覚悟がなくては強くならない。

ボール回しは50回やった、やりきった。それはいい。みんなで50回と決めたから、途中でやめなかった。誰かが『もう無理じゃん。』と言っても続けた。そして達成した。

チームで決めたことは、チームのみんなで乗り越えている。そこはいい。」

転「自分にも妥協しない」

「じゃあ、待っている間のスクワットは何回やったの?腕立て伏せは?ダッシュはあれが本当に全力だったって言える?

『1、2、3、あー疲れた。1、2、あー疲れた。あーやばいやばい、キャプテンがこっち見てるから、やってるフリしないと。』

こんな筋トレで力はつくの?こんなの誤魔化してるだけだよね。

自分で何回やるって決めてから、覚悟してから、それから始める。やり始めてから、あ、疲れたからもういいや。ちょっとキツいからもういいや。

それでは成長しない。強くならない。苦しいことから逃げて強くなれるなら誰も苦労しない。

チームのみんなでやることは、チームのみんなが見てるから、数えているから、ごまかしが効かないから、達成できる。それがみんなで練習する効果の一つだ。

でも筋トレなんて、自分一人でやることなんて、ごまかそうと思えばいくらでも誤魔化せる。

いや、それでいいのか?って。

自分がまず決める。何を何回やるって自分で決めるのが最初なの。都合の悪いメニューや目標でも、そこを乗り越えて、少しずつ伸ばしていく。そうしなければ、チームが決めたことも、達成できないまま終わることになるよ。」

結「自分が決めたことを自分が実行する以外に、成長する道はない」

「自分の壁は自分で決める。30回って決めたら30回やれ。やってできなかったら、25回に減らしてもいい。

でも、はじめから適当にやって諦めた25回ではなくて、自分で25回やってやると決めた25回じゃないと、駄目なんだ。

自分で積み上げたレンガの壁を、自分で乗り越える。

チームで立てた高い高い壁に向かって、みんなが一つ一つレンガを積み上げて登っていくんだ。

自分が決めて、自分が実行する以外に、成長する道はない。

一人ひとり、みんなで頑張りなさい。」

冬の練習メニューについて

本校の野球部では、冬の練習メニューは自分たちで考えさせています。平日の練習は2時間なのですが、実際には放課後から1時間も経つと日が暮れてしまいまともにできません。正直、夏のアップをそのままやっていたら時間がなくなってしまいます。

そのため「投げるメニュー」「打つメニュー」「体つくりメニュー」の3種類の練習メニューを1週間毎に取り組ませることにしました。平日は基礎的なメニューで、週末はケースノックやケースバッティングなどの応用メニューです。平日5日間の練習の成果を、土日の練習で確かめることにしています。

これらの練習メニューは生徒たちに考えさせました。ある程度は今までの指導でメニューを教えていますので、それらをどのように組み合わせたり、回数をこなしたりするかは、生徒たちでも決めることができると考えてのことです。

「ボール回し50回」について

本文中の「ボール回し50回」というのは、チーム力のバロメーターになる練習だと考えています。各ベースに部員を均等に置き、ホーム→三塁→二塁→一塁→ホーム…と時計回りにボールを投げていきます。連続50回を目標に、悪送球や後逸をしたらやり直しです。次に反時計回りで50回です。

つぎにホームと二塁、三塁と一塁の対角線で50回やります。 ホームと二塁のペアが終わっても、三塁と一塁が終わってなければ待っていることになります。それもできたらランダムで50回です。「3分間で何回できるか」と時間制にするときもありますが、今は回数制にしています。

野球は、ボールをもっていないときに何をするかが問われるスポーツだと思います。
「ただ待っている」という練習はないのです。時間は限られています。
今回はその待っている生徒たちの時間の使い方が気になったので話したことです。