面接の礼法に失敗というものはない。
「ああ・・・まちがえた。先生、もう一回、入るところからやらせてください。」
面接練習が始まった途端に、このように言う生徒が多いと思いませんか。
1 ドアをノックをする。
2 中から声が聞こえたら、両手でドアを開ける。
3 敷居を踏まないように中に入る。
4 「失礼します」と言って、一礼する。
5 椅子の左側まで歩いていく。
礼法指導のプリントやテキストにはそのようなことが書いてあります。分かりやすいイラスト付きで。
そして、その通りにできないと「失敗した」と思ってしまう。多くの中学生がそうでしょう。
そのような生徒にどのようにアドバイスをしたらいいのでしょうか。わたしの考えです。
人生初の「面接」に臨む生徒
多くの中学生が15歳で初めて「面接」というものを経験します。
これまで英検やパフォーマンステストなどで、試験として人前で話をするという経験はあったかもしれませんが、人生が変わるほどの緊張感をもって行う「面接」は初めてという生徒が多いでしょう。
そういった生徒に対して初めての面接の練習をするわけですから、上記のようなマニュアルが必要になります。
たくさんの「面接ガイド」「面接マニュアル」「面接対策テキスト」も市販されています。学校で独自に作っているところもあると思います。
さらに面接練習が進むと一般的な質問だけでなく、高校別に「過去質問集」なんていうのも作られます。教えてくれた卒業生たちに感謝感謝です。
しかしマニュアルが有るからこそ、そのとおりにできないと「失敗した」と思って、「やりなおさせてください!」となってしまうのです。
生徒の中では「マニュアル=正解」なのです。
これまでのテストも「模範解答=正解」でやってきているのですから仕方ありません。
正解はどちらなのか。
しかしながら、面接に失敗はありません。
(デイル・ドーデンの「試すことに失敗はない」みたいですね。)
面接に失敗ということないのです。いろいろな「面接マニュアル」を見てみると分かります。
ドアをノックする回数が「2回」と書かれているものもあれば「3回」のものもあります。
「ドアを開けたら礼をして中に入る」に対して「ドアを開けたら中に入って礼をする」もあります。
正解はどちらですか。
いやいや、そしたらそうではない方のテキストは間違っているのでしょうか?そんなことはないはずです。
つまり、礼法に絶対的な正解はないのです。
だって、いろいろな礼法がいろいろな本(ホームページ)に書かれているのですから、どれが正解なのか確かめようがありません。
ドアを両手で開けようが、片手で開けようが、実は問題ないのです。カバンをもったまま入るのであれば片手でも仕方ないでしょう。そこでいややっぱり両手が良いよねと思えば、カバンは下に置けば良いのです。
もしかしたら、「カバンは入り口のテーブルに置いて入ってください」と言われたり、「控室に置いていくようにしてください」と言われるかもしれません。そんなことは受験会場に行ってみないと分からないのです。
これは「お茶」や「書道」などの流派がちがうからというレベルです。絶対解があるわけではないのです。
さまざまなパターンが考えられるのに、その全てを練習させること、身に付けさせることは不可能です。
というわけで「礼法に正解はない」と言えます。
面接の礼法は基本的なことができていれば十分なのです。
面接礼法の基本は「礼儀正しい」こと
では、面接の礼法の基本的なこととは何か?と言われれば、それは、
「礼儀正しい」
ことです。お行儀よくすればいいのです。
おそらくほとんどの中学校で、面接練習をくり返し行っています。
高校側もそんなことはお見通しです。
高校の先生は、受験生が中学校の先生の指導を受けて何回も練習してきていることを知っています。
面接官は何を見ているのか?
では、いったい面接官は何を見ているのでしょうか?何を知りたいのでしょうか?
こういうことです。
「この生徒は、学校で教わったことを教わったとおりにできるのか?」
「練習してきたことができるのか?教えられたらできるようになるのか?」
「高校に来てから礼法を指導する手間はないか?」
なぜなら、その受験生が自分たちの高校に入ってきたら、今度は自分たちが大学入試や就職試験に向けた面接指導をしなくてはならないからです。
教えられたことができない子に教えるのは大変です。練習してもできない子をできるようにさせるのは大変です。そういう生活面や礼儀作法の指導に対する吸収力は、面接で見抜かなくてはいけません。
受験生はたくさんいるのですから、ペーパーテストで計れる学力だけでなく、生活面についてももうすでにちゃんとできている手間のかからない子を採りたいのです。
そのためにどうするか?
ここまで分かって、さてどうするか? 次のような作戦を実行します。
たとえ失敗しても「失敗してないよ」という顔をして、そのまま進めてしまうのです。
どこの中学校も礼法指導の内容はさまざまです。
同じ学校でも、毎年のように「入ってから礼する?礼してから入る?」なんてことを先生方で協議しながら共通理解を図っています。
あるいは進路指導主事の先生から「ノックは2回するようにしましょう。」と、先生方に周知しています。学年集会などでまとめて生徒全員に伝えているかもしれません。
いずれにせよ、絶対的な礼法はないわけです。
だから、「わたしはこういう風に教わってきたんです~」と素知らぬ顔をして、そのまま進めてしまうのです。
イスに座る前に「お願いします。」と言わなかったからといって、減点されることはないのです。そういう風に言いなさいと教えている中学校もあれば、教えていない中学校もあります。
そして高校の先生は、今年の◯◯中学校の礼法指導でどのような指導をしているか知りません。高校の先生も正解(面接マニュアル)を知らないのです。
そこで「あっ、言わなかった!失敗した!」という顔をしてしまうから、面接官に(この生徒は教わってきたことができなかったんだな)とバレてしまうのです。演技し続ければ良いのです。
失敗しても動揺せずに、ピンチを乗り切ることができるというところを見せましょう。
面接に正解はありません。逆に言えば、面接に失敗はないのです。
ありのままの自分を見てもらいましょう。自分が普段やっていたこと以上のことは出来ません。
だからこそ、普段から「礼儀正しい」生活が必要になるし、それを身につけるために面接マニュアルがあるのです。
「面接の礼法で失敗したとき」まとめ
「面接の礼法に失敗はない。」という話は、面接練習の終盤、面接官とのやりとりの指導にシフトしている頃に行います。
あまり早いと、だったら練習なんかしなくていいと思う生徒がいるかもしれません。それでは、礼法を身に付けさせるチャンスを、みすみす逃してしまうことになります。
高校では面接の礼法指導をどれだけ行うか分かりません。また、面接を実施しない高校もあります。そういった高校を受験する生徒にとっては、中学校の今、しっかりと指導して身につけさせる必要があります。高校に入ってから「そんな事も知らないの?」と言われかねないからです。
面接練習とは、中学3年生がそれまでの子供の生活から、大人へと変わるための指導の場です。高校に入るためではなく、生徒を自立した大人へと導くために、面接指導をしていくようにしましょう。